注意欠陥多動性障害(ADHD)は,発達に不相応な著しい不注意,多動,衝動性を特徴とする行動の障害です.授業中に落ち着かずに動きまわる,集中して話をきくことができない,衝動的な行動に走る,などの症状を呈します.これらの問題行動は,その子自身の努力が足りないわけでもなく,親のしつけが悪いわけでもありません.最近の研究では,脳の神経伝達物質の障害がその原因でないかと指摘されていますが,病態・病因は十分に解明されていません.

ADHDの頻度は全学童の3-5%と言われており,めずらしい病気ではありません.性比は男児4-5対女児1で,男児に多い傾向があります.ADHDは上記のような症状を示すため,集団生活に入る時,つまり小学校入学時に顕在化することが多いようです.ADHDの子どもは,家庭でのしつけがなっていない,教室で手がかかるなどと評されることが多く,その子ども自身に2次的な精神的苦痛,混乱が生じることがあります.適切な診断がなされないまま放置された場合には,子どもの学習意欲が損なわれ,自己評価が低くなり,自尊感情が育たたず,社会的問題が起こり,家族にも混乱が生じることがあります.

ADHDは学習障害(LD)や自閉症などと混同されることがあります.ADHDの20-30%はLDを合併していることがあり,厳密に区別をすることができない場合もあります.大切なことは児童精神科医の診断を受けることですが,新潟県内には「中央児童相談所」「はまぐみ小児療育センター」「長岡日赤病院精神科」「悠久荘児童外来」などに少数の専門医がいるに過ぎません.お子さんに疑いがある場合には,この方面に詳しい小児科医にまず御相談ください.そのお子さんにあった専門医を紹介してくれるはずです.

ADHDの治療には,薬物療法,親トレーニング(親が理解し対応を学ぶ),社会技能トレーニング(本人が社会適応や対人関係を学ぶ)などがあります.

薬物療法ではMethylphenidate(商品名リタリン)が第1選択になります.効果は内服後30-60分から発現し,2-5時間持続します.約70%のお子さんに著効ないし効果があります.覚醒水準を高め,不注意,衝動性,多動などを軽減させ,攻撃,反抗,挑戦などの問題行動を改善するばかりでなく,書字が整い,情緒の安定をもたらします.
当院でも数名のお子さんに投与していますが,確かに効果があり,投与後には集団生活への適応が明らかに改善しています.

大切なことは社会全体がADHDという病気の存在を知り,理解することです.適切な診断や治療がなされれば,子ども本人の日常生活が改善し,周囲も無用なストレスを感じずに済みます.しかし,そうでない場合には前述したように2次的問題が起こってしまいます.一見するとからだは健康でもこういった疾患を持つお子さんがいることを,社会全体がもっと理解すべきと思います.