食中毒を引き起こす細菌としては,(1)サルモネラ,(2)ブドウ球菌,(3)腸炎ビブリオ,(4)病原性大腸菌,(5)カンピロバクター,(6)ウェルシュ,(7)セレウス,(8)ボツリヌスなどが知られていますが,このなかでは(1)-(5)の発生件数が多く注意が必要です.

発生件数はサルモネラが最多で,腸炎ビブリオ,病原性大腸菌がこれに続きます.

全食中毒の74%が5-10月に集中し,暑い時期に増加します.腸炎ビブリオは99%,ブドウ球菌は87%,サルモネラは74%,カンピロバクターは60%がこの時期に発生します.しかし,寒い時期も発生はゼロではありません.

サルモネラは鶏卵や肉類が原因物質で,潜伏期間は1-5日,発熱,下痢,腹痛,嘔吐などが主な症状です.腸炎ビブリオは生食魚介類が原因で,潜伏期間は12-24時間,腹痛や嘔吐が激しいですが発熱は欠きます.ブドウ球菌は調理者の手の傷などが原因になり,潜伏期間は1-5時間,嘔吐,水様便が激しいですが無熱です.病原性大腸菌は加工食肉製品や水耕野菜が原因で,潜伏期間は1-数日,水様便が主症状で,嘔吐,腹痛などを生じます.病原性大腸菌のうちO157などのベロ毒素産生株の場合には,腹痛に加えて血便があり,溶血性尿毒症症候群(HUS)を合併して腎不全,痙攣などが生じ死亡することがあります.カンピロバクターは肉類が原因で,潜伏期間は3-5日,腹痛,下痢などを生じます.

細菌性食中毒の1次感染を防ぐには,(i)食材の注意(生野菜を十分に洗浄する,肉類や冷凍食品はよく加熱する),(ii)調理用具の管理(まな板,包丁,ふきんを熱湯や次亜塩素酸ナトリウムで消毒する),(iii)調理人の衛生(手に触れた食材が変わるごとに手洗いをする),(iv)調理後の食品の管理(缶詰や真空パックのなかでも増殖する菌があるので,調理した食品は速やかに食べる),などが大切です.

2次感染(患者から周囲の人への感染)を防ぐには,患者の糞便に注意しないといけません.(v)手洗いの励行(糞便を処理した後には石鹸や流水で十分に時間をかけて手を洗う),(vi)寝具の洗濯(寝具には糞便が付着している可能性があるので,洗剤を用いて80度10分間で洗濯をするか,0.01-0.1%の次亜塩素酸ナトリウムに5分間浸す),(vii)洗面所の湿潤場所の注意(湿った場所では菌が繁殖しやすいので洗面台やカランは石鹸で洗い乾燥させておく),などが大切です.