2008年3月,当院周辺ではマイコプラズマ感染症が流行しています.マイコプラズマは小児の呼吸器感染症で重要な位置を占めます.主な症状は発熱,乾性の咳ですが,肺炎を起こすこともあり,気管支喘息の発作を誘発します.合併症として,3-4%に中枢神経症状(髄膜炎,脳炎),8-15%に消化器症状(下痢,嘔吐,食欲不振,肝機能異常),3-30%に発疹などを生じることがあり,臨床像は多彩です.

マイコプラズマ感染症の治療には,マクロライド系,テトラサイクリン系,ニューキノロン系の抗生物質が有効です.小児では,副作用を考慮して,一般的にマクロライド系抗生物質が使用されています.しかし,2000年に札幌市でマクロライド系抗生物質に耐性を持つ(=効きづらいまたは効かない)マイコプラズマが検出されました.それ以後,いくつかの報告がありますが,マイコプラズマ感染症の15%程度がマクロライド耐性株です.

小児における検討では,マクロライド系抗生物質投与後の有熱期間は,マクロライド感受性(=マクロライドが効く)群では平均1.4日に対して,マクロライド耐性群では平均4.3日であり,統計学的に有意差が認められました.また,マクロライド系抗生物質投与開始後48時間以上発熱が持続した割合は,マクロライド感受性群では19.2%でしたが,マクロライド耐性群では72.7%に達していました.しかし,発熱以外の臨床徴候には感受性群と耐性群で差はなく,マクロライド耐性群が重症化するという傾向は観察されませんでした.

当院では,マイコプラズマ感染症に対してマクロライド系抗生物質のクラリス,ジスロマック,リカマイシンなどを投与しています.臨床経過,レントゲン像,検査所見からマイコプラズマ感染症と診断しマクロライド系抗生物質を適切に投与しても解熱しない症例が,前述した報告と同様に10-20%程度あります.こうした症例は,マクロライド耐性マイコプラズマと考えられます.

マイコプラズマ感染症は,軽症では咳風邪ですが,喘息発作を誘発し,重症肺炎に至る場合もあります.咳が長引く,ゼイゼイする場合には,早めに受診してください.