近年,1歳以上で発見される先天性股関節脱臼の増加が指摘されています.増加の理由は不明ですが,ベビースリングの使用や横抱きの習慣など股関節脱臼の予防にとって好ましくない育児法が行われていることなどが影響しているようです.病名には「先天性」という文字がついていますが必ずしも生まれつきのものでなく,正しい育児法で予防することが可能です.先天性股関節脱臼は,開排制限(脱臼側の脚が十分に開かない),脚長差(脱臼側の脚が短い),大腿内側の皮膚溝の非対称などで気付かれ,3-4カ月児健診などで発見される場合があります.完全に脱臼していれば典型的な症状を示す場合もあります.しかし,臼蓋形成不全,亜脱臼などの病態もあり,健診だけで100%発見することが不可能です.レントゲン撮影により大腿骨頭の偏位があれば確定診断できますが,医療被爆とくに性腺被爆の問題もあり全例にレントゲン撮影を行うことは現実的ではありません.

2013年8月13日,日本小児股関節研究会の「乳児股関節健診あり方検討委員会」から先天性股関節脱臼の予防について以下の通りの提言が出されました.
http://www.jpoa.org/3684/

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赤ちゃんのご誕生おめでとうございます.今,大丈夫でも,これから脱臼することがあります! 
1.女の子,2.逆子(骨盤位)で生まれた,3.寒い時期(11月から3月)に生まれた,4.家族に股関節の悪い人がいる,5.向き癖がある,などがリスク因子です.1-5のうち複数当てはまる場合には注意が必要です.

いつも顔が同じ方ばかり向いている「向き癖」は,向いている側の反対の脚がしばしば立て膝姿勢となってしまい,これが股関節の脱臼を誘発することがあります.赤ちゃんの脚は両膝と股関節が十分曲がったM字型で,外側に開いてよく動かしているのが好ましいです.立て膝姿勢や脚が内側に倒れた姿勢を取ると,股関節が徐々に脱臼してくることがあります.両脚がM字型に開かず,両脚が伸びたような姿勢も同様に要注意です.

歩き始めるまでは次の点に注意しましょう.
1.仰向けで寝ている時はM字型開脚を基本に,脚には自由な運動をさせましょう.
2.抱っこは正面抱きが好ましく,「コアラ抱っこ」をしましょう.
両膝と股関節を曲げてM字型に開脚した状態を基本として,自由に脚を動かせる環境をつくりましょう.両脚を外から締めつけて脚が伸ばされるようなきついオムツ(巻きオムツ)や洋服は避けましょう.赤ちゃんを正面から抱くと,両膝と股関節が曲がったM字型開脚で親の胸にしがみつく形になります.この正しい抱き方は,あたかもコアラが木につかまった形であることから「コアラ抱っこ」とも呼ばれています.同様に,両膝と股関節がM字型に曲がって使える「正面抱き用の抱っこひも」の使用も問題ありません.横抱きのベビースリングは開脚の姿勢がとれず,両脚が伸ばされる危険もあるため注意が必要です.向き癖がある場合には反対側の脚の姿勢に注意しましょう.向き癖方向と反対側の脚が立て膝姿勢にならずに外側に開脚するような環境を作ってあげるよう留意しましょう.赤ちゃんには常に向き癖の反対側から話しかける,向き癖側の頭から身体までをバスタオルやマットを利用して少し持ち上げるなどの方法が提唱されています.それぞれの赤ちゃんに合った方法を工夫してみましょう.
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3-4カ月児健診で,股関節脱臼の疑いがあるはどうかをチェックします.しかし,問診や身体所見だけで,乳児股関節異常をもれなく発見することはできません.股関節脱臼が疑わしい場合には整形外科を紹介します.ご心配な方はご相談ください.