小児のアトピー性皮膚炎の多くは,乳児期早期に発症します.頬が赤くただれ,耳の付け根が切れ,体幹に皮疹が出現し,やがて肘の内側や膝の裏側がガサガサに荒れて来ます.

生後2カ月になるとヒブワクチン,小児用肺炎球菌などのワクチン接種が始まります.生後2-4カ月頃にアトピー性皮膚炎を発症することが多いため,ワクチン接種時にアトピー性皮膚炎を指摘されます.保護者はお子さんの皮膚が荒れていることに気付いてはいるものの,そのうちに治るだろうとなんとなく考えていて治療が開始されていないことがほとんどです.ただし,父母,同胞にアトピー性皮膚炎があって病態をよく理解し適切な治療を受けている場合には,自ら積極的に診断,治療を求めます.

従来は,食物アレルギーが主因となってアトピー性皮膚炎が発症すると考えられて来ました.食物アレルギーが関与するアトピー性皮膚炎は確かに存在します.しかし,現在は,アトピー性皮膚炎を放置して皮膚が荒れたままだと食物抗原が皮膚から侵入し,食物アレルギーを獲得すると考えられています.健常な皮膚にはバリア機能があり,外界からの異物の侵入を排除してくれます.一方,アトピー性皮膚炎では天然保湿因子の減少などにより皮膚バリア機能が破綻または低下していて,体内に抗原が侵入してしまいます.小児は成人に比べてもともと皮脂が少なく乾燥しやすいので,アトピー性皮膚炎を発症しやすくなります.

乳児アトピー性皮膚炎は,できるだけ早い治療開始が望まれます.生後6カ月から治療を開始しても,食物抗原による感作は防げません.でれきば,生後4カ月になる前の治療を開始した方がよいでしょう.

アトピー性皮膚炎の治療を開始するにあたっては,血液検査が必要です.TARCは,アトピー性皮膚炎の病勢を鋭敏に反映します.治療開始前には,TARCは高値を示します.ステロイド外用剤による治療を開始するとほとんどの例で低下するので,治療開始前の検査が必須です.食物抗原特異的IgEも調べます.皮膚症状がひどい場合や治療開始が遅れた場合には,乳児期早期でも陽性を示すことがあります.ただし,陽性を示した抗原が必ずしもアトピー性皮膚炎の原因や悪化因子ではありません.IgEが陽性を示したという理由だけで,その食物を制限してはいけません.ヒトは異種蛋白を摂取しないと生きていけません.このために,私たちの腸管には免疫寛容という仕組みが備わっています.不要な食物制限は,経口免疫寛容の成立を妨げてしまいます.口のまわりが赤くなる程度であれば,その食物を食べ続けた方が食物アレルギーは早く寛解,治癒します.

アトピー性皮膚炎では,皮膚のバリア機能低下と炎症があります.バリア機能の補正には保湿剤を,皮膚炎がある場合にはステロイド外用薬を塗布します.治療開始時には,まずステロイド外用薬を塗って見ても触れても湿疹が全くない状態にします.乳児では,顔,体幹,四肢ともにIV群のステロイド外用薬で通常は十分です.眼周囲もIV群を塗布します.体幹や四肢については,IV群で治療効果が不十分な場合にはIII群を使用します.ステロイド外用薬を連日塗布して皮膚がきれいになったら,プロアクティブ療法に移行します.すなわち,皮膚炎が再燃しないように月,水,金曜日にステロイド外用薬を塗布し,2-3週間程度経過が順調であれば月,金曜日に回数を減らし,さらに月曜日だけにします.最終的には保湿剤だけで皮膚症状がコントロールできることを目指します.軽症例では,プロアクティブ療法をせずに保湿剤のみに移行し,悪化時にステロイド外用薬を使用します.TARCが高値のうちにステロイド外用薬を止めると,皮膚炎が再燃してしまいます.TARC値を参考にしながら,治療を緩めて行きます.

ステロイド外用薬を塗って見掛け上湿疹がなくなっても,皮膚炎は完全には終息しません.湿疹がなくなっても,さらに2-3日間はステロイド外用薬の塗布が必要です.湿疹病変だけでなく,その周囲2-3cm程度には皮膚炎が少なからず存在します.やや広めにステロイド外用薬を塗布してください.

リンデロンVGやネオメドロールEE軟膏には抗菌薬が含まれているので,化膿性病変がない場合には使用してはいけません.不要な抗菌薬塗布は,接触皮膚炎を起こしてしまいます.眼周囲へのステロイド外用薬の塗布を1カ月以上続けると緑内障を起こすことがあるので,注意が必要です.

一般的に,アトピー性皮膚炎は皮膚が乾燥しやすい冬季に悪化します.10月になって気温が低下し汗をかかなくなったために皮膚が乾燥し,アトピー性皮膚炎の発症,悪化で受診するお子さんが増えて来ました.皮膚が荒れた場合には,当院にご相談ください.必要な検査をして,適切に治療します.