咳嗽(せき)はその持続期間により,3週未満を急性咳嗽,3週以上8週未満を遷延性咳嗽,8週以上を慢性咳嗽に分類されます.

咳を主訴に小児科外来を受診した調査では,急性咳嗽が92.5%,長引く咳(遷延性咳嗽+慢性咳嗽)が7.5%でした.長引く咳の原因疾患は,35.1%が呼吸器感染症,33.4%が気管支喘息,24.3%が耳鼻疾患,0.8%がアトピー咳嗽,0.4%が心因性,5.7%がその他という結果でした.

遷延性咳嗽の原因は多種多様ですが,問診と診断的治療(薬剤への反応性)によって大まかに鑑別が可能です.問診では,咳嗽の出る時間帯(昼間か夜間か),咳嗽の性状(湿性か乾性か),睡眠とともに消失するかが特に重要です.診断的治療では,ヒスタミンH1受容体拮抗薬,β2刺激薬,ヒスタミンH2受容体拮抗薬の有効性などにより鑑別します.

遷延性咳嗽を来たす主な疾患と特徴は以下の通りです.

1.アレルギー性鼻炎:咳払いに水様性鼻汁,くしゃみ,鼻すすりを伴い,アトピー素因があります.昼間に咳が目立ち,湿性咳嗽で,ヒスタミンH1受容体拮抗薬が有効です.
2.鼻・副鼻腔炎:後鼻漏,膿性鼻汁がみられます.感冒症状が始まってから10日以上咳が続きます.頭部X線撮影で診断が可能です.昼間に咳が目立ち,湿性咳嗽ですが,ヒスタミンH1受容体拮抗薬は無効です.
3.胃食道逆流症:食後や活動中,仰臥位で咳が増強します.ヒスタミンH2受容体拮抗薬が有効です.昼間に咳が目立ちます.
4.心因性咳嗽:覚醒時にのみに出現し,睡眠中に消失する奇異な咳が特徴です.
5.気管支喘息:反復性の呼気性喘鳴,アトピー素因,呼吸困難などがみられます.夜間に咳が目立ち,β2刺激薬が有効です.
6.感染性咳嗽:肺炎マイコプラズマ,肺炎クラミジア,百日咳などでは咳が長引きます.抗体検査などにより診断が可能です.β2刺激薬は著効せず,適切な抗菌薬の投与が必要です.
7.アトピー咳嗽,喉頭アレルギー:症状に季節性があり,アトピー素因があり,ヒスタミンH1受容体拮抗薬が有効です.昼間よりも夜間に咳が目立ちます.

遷延性咳嗽は原因疾患が多く,症状が似ています.また,気管支喘息にアレルギー性鼻炎を,アレルギー性鼻炎に副鼻腔炎を合併することがしばしばあります.肺炎マイコプラズマ,肺炎クラミジア,百日咳などの気道感染症は,喘息発作を誘発します.このため,診断や治療に難渋する場合があります.

当院では,アレルギー検査,抗体検査,胸部あるいは頭部X線撮影などを行い,遷延性咳嗽の診断および治療を積極的に行っています.長引く咳でお困りの方は,当院にご相談ください.