スギ花粉症は,スギ花粉がアレルゲンとなって起こるアレルギー疾患です.主な症状は,くしゃみ,鼻みず,鼻づまり,目のかゆみなどです.思考力の低下,睡眠障害,いらいら感,疲労,外出を控えなければならないなど,日常生活に支障が出る場合もあります.日本人の4人に1人がスギ花粉症です.

スギ花粉症の治療には,第2世代抗ヒスタミン薬やロイコトリエン受容体拮抗薬の内服,ステロイド点鼻液,抗ヒスタミン点眼液などが用いられます.これらの薬剤を使用すると症状は軽減しますが,スギ花粉症が治るわけではありません.

アレルゲン免疫療法は,アレルゲンを少量から投与することで,からだをアレルゲンに慣らしていく治療法です.アレルゲン免疫療法には,皮下免疫療法と舌下免疫療法があります.皮下免疫療法は皮下に注射する治療法で,医療機関で行われます.注射であるため痛みを伴い,長期間の通院が必要になります.一方,舌下免疫療法は舌下に治療薬を投与するため,痛みがなく,自宅で服用できます.日本では,スギ花粉症とダニアレルゲンによる通年性アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法が保険適応になっています.

2014年10月に,鳥居薬品株式会社より「シダトレン スギ花粉舌下液」(以下,シダトレン)が発売されました.シダトレンは,スギ花粉症に対する舌下投与によるアレルゲン免疫療法薬です.12歳以上の患者さんが治療を受けることができます.1日1回少量から服用を始め,2週間は徐々に増量し,その後は決まった量を数年にわたり継続します.初回の服用は,スギ花粉が飛散していない時期に,医師の監督のもとに行う必要があります.服用方法は,治療薬を舌の下に滴下し,2分間保持した後に飲み込みます.その後5分間はうがい,飲食を控えます.スギ花粉が飛んでいない時期も含め,毎日服用します.服用する前後2時間程度は,激しい運動,アルコール摂取,入浴などは避けるようにしてください.効果を発現するメカニズムは十分には解明されていませんが,少量のアレルゲンが体内に入ることによりアレルギー反応を抑制する免疫反応が起こると考えられています.

シダトレンを用いて長期にわたり正しく治療をすれば,くしゃみ,鼻みず,鼻づまり,涙目,目のかゆみなどのスギ花粉症の症状が抑制され,生活の質が改善します.完全に抑えられない場合でも,症状が軽快し,アレルギー治療薬の減量が期待できます.

シダトレンの主な副作用は,口内炎,舌の下の腫れ,喉のかゆみ,耳のかゆみ,頭痛などです.重大な副作用として,ショックやアナフィラキシーが起こる可能性があります.

治療を受けるにあたっては,シダトレンを数年間続ける覚悟が必要です.シダトレンの効果は70%程度で,全てのスギ花粉症患者に有効というわけではありません.シダトレンの服用を3年間継続すると,治療を中止しても7年間程度は効果が持続します.スギ花粉症が再発した場合には,シダトレンを再開・持続すると再度効果が得られます.

シダトレンについては「本剤は,緊急時に十分に対応できる医療機関に所属し,本剤に関する十分な知識と減感作療法に関する十分な知識・経験を持ち,本剤のリスク等について十分に管理・説明できる医師のもとで処方・使用すること.薬剤師においては,調剤前に当該医師を確認した上で調剤すること.」と警告されています.このため,シダトレンの処方は,事前に関連学会が主催する「舌下免疫療法の講習会」を受講修了し,続いて「シダトレン適正使用eラーニング」を受講修了した後,「シダトレン適正使用eテスト」に合格することで「受講修了医師」として登録される必要があります.当院は前述した諸手続きを完了し,既に希望者にシダトレンの処方を行っています.

シダトレンはスギ花粉飛散期には開始できません.新潟県では桜が全て散り終えてしばらくすると,スギ花粉は飛ばなくなります.5月下旬から6月には,シダトレンを開始することができます.スギ花粉症を治したい!と思う12歳以上の方は是非当院にご相談ください.成人を含め,シダトレンを処方します.