一般的に,アトピー性皮膚炎は冬に悪化します.太平洋側では冬季は空気が乾燥しているためにこのような現象はよく見られますが,新潟県では湿気が多いために太平洋側ほどには冬季の悪化は見られません.一方,夏には汗や汚れによりアトピー性皮膚炎が悪化することがあります.特に,汗の溜まりやすい肘の内側,膝の裏側,首,耳の付け根などは夏季に悪化しやすいので注意が必要です.

アトピー性皮膚炎の汗による悪化は,経験的によく知られていました.近年の研究で,この現象は汗によるI型アレルギー反応によるものであることが明らかになり,ヒスタミン遊離試験で検査をすることができます.ヒト汗によるヒスタミン遊離試験の陽性率は,アトピー性皮膚炎患者では68%,発汗により膨疹が出現するコリン性蕁麻疹では66%,健常人では0%と報告されています.アトピー性皮膚炎の重症度とヒト汗によるヒスタミン遊離の程度は,小児では相関が見られますが,成人では明らかな関連はないようです.さらに,精製された汗抗原の本態はマラセチア属という真菌の1つである M.globosaの分泌蛋白であり,これがアトピー性皮膚炎の汗による悪化に関与していることが明らかになりました.マラセチア属は14菌種が同定され,このうちヒトの皮膚からは9菌種が検出され,さらにこのうちアトピー性皮膚炎患者からはM.globosa,M.restrica,M.sympodialisが高率に検出されます.

汗による悪化を防ぐには,風通しがよく涼しいところで過ごす,汗をかいたらすぐに拭き取るあるいは着替える,シャワーを浴びて汗をよく洗い流す,などの注意が必要です.アレルギー関連の学会では,学校でのシャワー浴の有効性が数多く報告されています.都道府県によっては学校に温水シャワーを設置し,アトピー性皮膚炎患者には体育授業やクラブ活動などで汗をかいた後に使用させているところもあります.

アトピー性皮膚炎では皮膚バリア機能が低下・破綻しているため,皮膚感染症に罹患しやすくまた広がりやすくなります.

あせも,虫刺され,傷を放置すると,伝染性膿痂疹(とびひ)になることがあります.とびひになると膿(うみ)をもった水ぶくれが,体のあちらこちらにできます.鼻からとびひが始まることがよくあります.とびひの原因菌の90%は黄色ブドウ球菌ですが,そのうちの10-30%は耐性菌のため治りにくいです.子どもの鼻の中や爪の先には黄色ブドウ球菌がいます.鼻をよくかみ,爪を短く切ることは,とびひの予防になります.手洗いの際には,指先もせっけんでよく洗いましょう.あせもや虫刺され,傷はすぐに治療をしましょう.とびびになった場合には,抗菌薬の外用,必要に応じて内服を速やかに行います.

伝染性軟属腫(水いぼ)は夏に特別増えるわけではありませんが,プールや水遊びで裸になる機会が増えるため目立ちます.つぶすと白い塊が出てきます.この中に水いぼのウイルスが含まれていて,かくと広がります.水いぼは体には無害ですが,自然治癒には半年以上かかることもあります.治療法としては,局所麻酔薬テープを使用してのピンセット摘除術,ヨクイニンの内服があります.健常児では自然治癒を期待する場合もありますが,アトピー性皮膚炎では水いぼが広がりやすいです.水いぼの数が少ない場合にはピンセット摘除術を,広がってしまい数が多い場合にはヨクイニンの内服がいいでしょう.

汗や汚れなどによりアトピー性皮膚炎が悪化した場合には,ステロイド外用療法を強化します.ステロイド外用薬はその強さにより5つの群に分類され,I群が最強です.例えば,日頃はIV群のステロイド外用薬でプロアクティブ療法を行っている場合,悪化時にはIV群の連日塗布か,必要に応じて強めのIII群の連日塗布を行います.極端に悪化した場合には,さらに強いII群やI群のステロイド外用薬が必要になります.皮膚症状が改善したら,元の治療に戻します.

これから気温の上昇とともに,汗や汚れによるアトピー性皮膚炎の悪化が目立つようになります.当院では多くのアトピー性皮膚炎を治療しています.皮膚症状悪化時には,早めに受診してください.適切に治療します.