2000年頃までは食物アレルギーの原因は経腸管感作と考えられ,食物制限が推奨されて来ました.しかし,その後,2008年頃からは食物アレルギーの発症予防に対して,食物除去は推奨されなくなって来ました.

現在は,生活環境のなかにある食物抗原が皮膚を通して体内に侵入する「経皮感作」が,食物アレルギーの主な原因と考えられています.経口摂取で腸管に達した食物抗原は「経口免疫寛容」を起こし,むしろ食物アレルギーを起こさない方向に働きます.

食物アレルギーの発症予防についてはいくつかの研究結果が出ていますが,今回はピーナッツと鶏卵について紹介します.

欧米ではピーナッツを食べる習慣があり,ピーナッツアレルギーの発症が日本よりは多いです.アレルギー性疾患のハイリスク群つまりアトピー性皮膚炎や卵アレルギーのある児では,ピーナッツを早く食べた方がピーナッツアレルギーの発症が少ないという結果が得られています.食物の早期摂取は,食物アレルギーを減らします.しかし,実際にピーナッツの早期摂取を試みると,生後4-10カ月でも実際にはアレルギー症状が出てしまう場合があります.あらかじめ皮膚テストで陽性を示す高リスクの児を除外し,中程度リスクの児にピーナッツを食べさせた場合でも13%にアレルギー症状が誘発されます.早期に食べ始めれば食物アレルギーを予防できますが,一方で食べ始めにはリスクもあります.

卵アレルギーの予防研究では,アレルギー素因のない児に早期に卵を摂取をさせても予防効果はないという研究結果が得られています.しかし,アトピー性皮膚炎がある児では,早期摂取で卵アレルギーを予防できます.生卵をいきなり与えた場合には,アレルギー症状が誘発されてしまいます.加熱卵で始めれば有害事象が起こりにくくなります.卵,牛乳,小麦,ゴマ,魚を生後3カ月から食べ始めた群と生後6カ月から食べ始めた群について3歳までの食物アレルギーの発症率を比較した研究では,全体としては両群に差がありませんでした.しかし,きちんと食べた児だけを拾い上げて再検討した結果では,生後3カ月から食べ始めた群の方が食物アレルギーの発症が少ないという結果が得られました.さらに詳しく検討すると,湿疹がある児では早期に食べ始めた方が有意に食物アレルギーの発症が少なくなっていましたが,湿疹がない児では早期に食べ始めても食物アレルギーの発症を減らすことはできませんでした.加熱全卵を生後6-9カ月に0.2g,生後9-12カ月に1.1gを与えた群と卵を与えずにかぼちゃを与えた群について1歳で卵を負荷すると,加熱全卵を食べていた群の方が卵アレルギーの発症は少なく,8-9割の予防効果があり,血液検査では卵IgEが低下し,遮断抗体である卵IgG4が上昇していたという結果が得られました.少量を早期から食べ始めることで,食物アレルギーを減らす可能性があり,有害事象が少なくなります.アトピー性皮膚炎があって感作が強い児が早期に食べると予防効果が高いようです.早期摂取に加えて,乾燥肌やアトピー性皮膚炎を治療した方が,卵アレルギーの発症が少なくなります.

2017年6月16日,日本小児アレルギー学会は,「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」を発表しました.
提言の骨子は以下の通りです.
・アトピー性皮膚炎(痒みのある乳児湿疹を含む炎症性の皮膚炎)に罹患した乳児では,鶏卵の摂取が遅いほど鶏卵アレルギーを発症するリスクが高まるというエビデンスに基づき,鶏卵アレルギー発症予防を目的として,医師の管理のもと,生後6カ月から鶏卵の微量摂取を開始することを推奨する.
・鶏卵の摂取を開始する前に,アトピー性皮膚炎を寛解させることが望ましい.
・乳児期早期発症のアトピー性皮膚炎,特に重症例では,この提言を実行するにあたりアレルギー専門医(小児科,皮膚科)や乳児期のアトピー性皮膚炎や食物アレルギーの管理に精通している医師による診療を受けることを推奨する.
・鶏卵の感作のみを理由とした安易な鶏卵除去を指導することは推奨されない.
・本提言は発症予防のためであり,すでに鶏卵アレルギー(即時型,食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎)の発症が疑われる乳児に安易に鶏卵摂取を促すことはきわめて危険であるため,「食物アレルギー診療ガイドライン2016」に準拠した対応をする.
http://www.jspaci.jp/modules/membership/index.php?page=article&storyid=205

乳児に湿疹がある場合や食物アレルギーがご心配な方は当院にご相談ください.適切に対処します.