2017年7月初旬から,当院周辺では手足口病の流行が始まりました.

手足口病は,乳幼児の間で流行する夏かぜの一種です.ほかの季節に流行することもあります.コクサッキーウイルスA6,A10,A16型,エンテロウイルス71型などにより起こります.原因ウイルスの種類によって,臨床経過に違いがあります.感染して3-5日後に,手のひら,足のうら,口の中,お尻,膝に2-3mm程度の小さな水疱が出現します.発熱は3分の1程度にみられますが,あまり高くなることはありません.手足の水ぶくれは痛くありませんが,口の中にできると痛いです.通常は数日の経過で自然治癒します.手足口病の原因ウイルスは数種類あるので,何度でもかかることがあります.まれに髄膜炎,小脳失調,脳炎,心筋炎,神経原性肺水腫,急性弛緩性麻痺を合併することがあり,注意が必要です.エンテロウイルス71型は他のウイルスよりも中枢神経系の合併症を起こしやすいことが知られています.

手足口病を直接治療する薬剤はありません.特別な治療は不要です.口の中が痛い時は,熱いもの,塩味や酸味の強いもの,かたいものは避けましょう.熱がなく元気なら,入浴は差し支えありません.口の中が痛くて水分摂取ができないと脱水になってしまいます.経口補水療法(OS-1,アクアライトORS)を行い,脱水にならないようにしてください.水分摂取ができない場合には,点滴が必要になります.高熱が続く,何度も吐く場合には髄膜炎の併発が疑われます.早目に再診してください.

保育所や学校には,発疹があっても本人さえ元気なら行ってかまいません.日本小児科学会からこの旨の勧告が出ています.発疹が消失して症状が軽快しても,数週間はウイルスが便などに排泄され続けます.感染しても発病せずに,ウイルスを排泄している場合もあります.症状のある期間だけの登園,登校禁止は感染防止には有効ではありませんし,ウイルス排泄が完全になくなるまで長期間隔離をすることは現実的ではありません.

感染対策としては,流水と石鹸を用いた十分な手洗いと排泄物の適切な処理が重要です.タオルの共用は,してはいけません.園児,児童だけでなく,職員も感染対策を励行しないといけません.

1997年から2000年にかけてマレーシア,台湾,大阪で脳幹脳炎および肺水腫を合併する特殊な手足口病が流行し,死亡例がありました.原因ウイルスはエンテロウイルス71型で,神経親和性の高い強毒株でした(すべてのエンテロウイルス71型がこのような症状を起こすわけではありません).マレーシア,台湾では多数の死亡があり,数週間にわたって保育園やプールが完全に閉鎖されました.大阪では3例が死亡しました.万が一,このような特殊な手足口病が発生した場合には,同様の処置が必要です.

日本では,2011年,2013年,2015年に全国的に手足口病が流行しました.2011年には主に西日本で流行し,コクサッキーウイルスA6型が多数分離されました. 2013年にも全国的に流行がありコクサッキーウイルスA6型が多数分離されましたが,新潟県ではエンテロウイルス71型も少数ですが分離されました.2015年にも全国的に流行がみられ,コクサッキーウイルスA6型と同16型が分離されました.

近年みられるようになったコクサッキーウイルスA6型による手足口病では,水疱が5mm程度と大きく,四肢末端に限局せずに前腕部から上腕部,大腿部から殿部と広範囲に認められ,発熱も39℃を上回ることも珍しくなく,水痘(みずぼうそう)との鑑別が困難な例もあります.また,手足口病を発症して治癒した後に,数週間を経て上下肢の爪が脱落する爪甲脱落症を来す場合があり,従来の手足口病よりも症状が強いという特徴があります.

2017年,6-7月から全国的にも手足口病の患者が増加しています.分離されているウイルスの4分の3がコクサッキーウイルスA6型で,2年ぶりに大きな流行になる可能性が高いです.

現在,当院周辺で流行している手足口病は,高熱を伴うことが多く,手,足,口のほかに,腕,臀部,大腿部,膝に水疱が出現し,なかには体幹に水疱を認める症例もあります.とくにアトピー性皮膚炎やドライスキンなどの皮膚疾患がある場合には,水疱がボコボコと盛り上がり,いつまでも消退しません.臨床症状からは,コクサッキーウイルスA6型によるものと考えられます.

今後,手足口病の流行の拡大が懸念されます.ご注意ください.