小児の気管支喘息は2-3歳頃に発症し,その後寛解,治癒に至る場合があります.しかし,思春期を過ぎても喘鳴が持続し成人喘息に移行してしまう場合や,重症化することもあります.日本における小児の気管支喘息の有症率については調査方法,対象年齢,地域により異なり,4-6%から20%弱と報告されています.気管支喘息は小児では頻度の高い疾患であり,可能であれば予防したい疾患の1つです.

気管支喘息の発症または増悪予防については,以下の知見があります.

1.出生前
(1) 一般的に,血中の25(OH)ビタミンDが20ng/mL未満はビタミンD欠乏症,20-30ng/mLはビタミンD不足状態です.母親の妊娠中の血中25(OH)ビタミンDが30ng/mL以上の場合には,生まれてくる児の3歳時点での喘息発症が有意に少なくなります.妊娠中に十分量のビタミンDを摂取しておくことが,生まれてくる児の喘息発症を減らす可能性が示唆されています.
(2)妊娠中の母体の喫煙は,生まれてくる児の喘息発症を増やします.ただし,妊娠初期に喫煙を止めた場合には,児の喘息発症率は高くはなりません.妊娠に気付いて早期に禁煙をすれば,間に合う可能性があります.

2.感作成立後
気管支喘息の発症には,ハウスダストやダニなどの吸入系抗原が重要な役割を演じます.感作の進展が喘息発症を促すことが知られています.食物アレルギーまたはアトピー性皮膚炎がある2歳未満の児を経過観察すると,喘息を発症した児では早期に吸入系抗原の感作が進んでしまいます.単抗原感作から多抗原感作に進むと,喘息を発症してしまうリスクが高くなります.単抗原感作の時点でアレルギー免疫療法を行えば,感作の進展を防ぐことができる可能性があります.

3.喘息児への介入
(1)喘息を発症した場合には,長期管理薬として抗炎症作用のある吸入ステロイド薬や抗ロイコトリエン薬が用いられます.吸入ステロイド薬は症状を抑えることはできますが,発症を予防することはできません.抗原感作がある児に対して抗ロイコトリエン薬の早期介入をしても,その後の喘息発症率には差がありません.
(2)2回以上の喘鳴のある生後6カ月から2歳の児に抗ロイコトリエン薬を1年間内服させても,対症療法を行っただけのものに比べて,その後の喘鳴に再発率には差がありません.ただし,1歳未満に限れば抗ロイコトリエン薬を用いて早期介入をした方が,その後の喘息発症は少なくなります.しかし,1歳以上に対して介入を行っても喘息の発症率には差がありません.

4.喘息を発症した場合の早期治療
日本の気管支喘息の治療ガイドラインは欧米のものに比べて,軽症のうちから抗炎症療法(吸入ステロイド薬,抗ロイコトリエン薬)を行うようになっています.喘息児に48週間抗ロイコトリエン薬を内服させた場合には喘息の増悪率は28%でしたが,抗ロイコトリエン薬を内服させなかった場合には増悪率は50%増加してしまいました.抗ロイコトリエン薬の長期内服は喘息の増悪を減らし,吸入ステロイド薬の使用や発作止めである短時間作用型気管支拡張薬の使用回数を減らすことができます.抗ロイコトリエン薬の方が吸入ステロイド薬に比べて伸長抑制が少ないので,抗ロイコトリエン薬をまず使用し,治療効果が不十分な場合に吸入ステロイド薬を加えた方がよいでしょう.

上記の通り,気管支喘息の発症予防についてはいくつかの知見があります.喘息を発症してしまった場合には,早期に治療をすることで増悪を防ぐことができます.

気管支喘息は気候の変わり目,とくに秋に多発ことが知られています.例年,秋分の日を過ぎた頃から,喘息発作を起こして来院するお子さんが増えます.夜間だけ咳込む,朝方だけ咳が出て止まらない,運動をすると咳が出る場合には,喘息の可能性があります.このような症状がある場合には,当院を早目に受診してください.適切に治療します.