2017年8月下旬より,当院では伝染性膿痂疹(とびひ)の患者数が増加しています.とびひには,水疱性膿痂疹と痂皮性膿痂疹があります.概ね,前者が90%,後者が10%です.

水疱性膿痂疹は,黄色ブドウ球菌によって起こります.主に乳幼児に,多くは夏季に発症します.皮膚バリア機能が破綻した皮膚では,黄色ブドウ球菌が感染し繁殖しやすくなります.アトピー性皮膚炎,虫刺され,汗疹(あせも)などがある場合には,注意が必要です.黄色ブドウ球菌は表皮の浅い層に侵入し,毒素を放出して水疱を形成します.近年,MRSAという抗菌薬が効きづらい黄色ブドウ球菌の存在により,とびひが治りにくくなっています.全国調査では,とびひからのMRSAの分離率は約30%です.

痂皮性膿痂疹は,A群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)などの連鎖球菌によって起こります.乳幼児に限らず,季節を問わず発症します.多くは黄色ブドウ球菌との混合感染です.水疱形成はありませんが,病変周囲の強い発赤が特徴で厚い痂皮(かさぶた)が付着します.ときに,発熱,咽頭痛などの全身症状を伴い,急性糸球体腎炎を合併することがあるので注意が必要です.

とびひの治療は,抗菌薬の外用と内服です.病変が数カ所の場合には,外用のみで治療します.一方,病変が広範囲に及ぶ場合には,外用に加えて内服が必要です.アトピー性皮膚炎ではとびひが広がりやすいので,病初から内服を併用した方がよいでしょう.

皮膚表面の膿や分泌物は,石鹸をよく泡立て,シャワーできれいに洗い流してください.洗い流すことによって,細菌量を減らすことができます.病変部位をきれいにしたら,抗菌薬をしっかり塗り,ガーゼで完全に覆います.消毒は皮膚の回復を阻害するので,通常は行いません.

とびひが数カ所で病変部位をガーゼで覆うことができれば,登園・登校はできます.ただし,プールや水遊びは禁止です.とびひが広範囲に及ぶ場合には,感染の危険が高いため登園・登校はできません.

こどもの鼻のなか,爪の先には必ず黄色ブドウ球菌がいます.鼻をよくかむ,手洗いをする,爪を短く切ることは,とびひの予防になります.手洗いの際には,指先も石鹸でよく洗いましょう.とびひは一度かかっても免疫はできません.何度でもかかります.黄色ブドウ球菌や連鎖球菌が侵入しないように,皮膚バリア機能を正常に維持することが大切です.乾燥皮膚を放置せずに保湿剤を塗る,アトピー性皮膚炎をきちんと治療する,虫刺され,湿疹,外傷などは放置せずに早目に治療することで,とびひを予防できます.日常のスキンケア,すなわち清潔と保湿を日頃から心掛けましょう.

一般的にとびひは夏に患者数が増加しますが,盛夏よりも,むしろじめじめした梅雨や秋雨の時季に多発します.十分注意しましょう.