2017年9-10月,咳が続くという訴えで多くのお子さんが受診しています.主な疾患は以下の通りです.

気管支喘息:気管支喘息の発作が気候の安定する真夏や真冬に少なく,春や秋などの季節の変わり目とくに梅雨や秋雨の頃に多いことは,従来からよく知られています.喘息発作に関係する気象因子としては,気温,湿度,気圧があげられます.これらのうち喘息の悪化因子として最も重要なものは,急激な気温の変化です.前日に比べ3-5℃以上平均気温が低下した日や数時間以内に3℃以上の気温の低下があった場合には,喘息発作が起こりやすくなります.喘鳴,激しい咳き込み,主に朝方や就眠前後に咳がある場合には,気管支喘息が疑われます.今年は9月中旬以後に朝夕の気温が急に下がったため,喘息発作が多発しています.

RSウイルス感染症:RSウイルスは,上気道炎,喉頭炎,気管支炎,細気管支炎,肺炎,無気肺などの呼吸器感染症を引き起こします.すべての年齢層で感染が起こり,生涯に何度でも感染します.初感染乳幼児の7割は咳や鼻汁のみで数日のうちに軽快します.一方,残りの3割は初期症状の2-3日後に咳がひどくなり,細気管支炎や肺炎を起こします.激しい喘鳴や陥没呼吸が生じ,人工呼吸管理を要する重症例もみられます.RSウイルス感染症の合併症としては,中耳炎がよく知られており,とくに乳児で多く認められます.RSウイルスに対する特効薬はないので,対症療法により軽快,治癒を待ちます.乳幼児期にRSウイルス感染により喘鳴を起こした場合には,将来的に気管支喘息に移行しやすいことが知られています.迅速診断キットがありますが,保険適応は1歳未満のみです.従来は晩秋から初冬に流行すると考えられていましたが,ここ数年は8-9月頃から患者発生が確認されています.今年は9月中旬以後に患者数が増加しています.

ヒトメタニューモウイルス感染症:ヒトメタニューモウイルスは,気管支炎や肺炎などの呼吸器感染症を引き起こします.好発年齢は1-4歳で,1-2歳が発症のピークです.乳幼児や高齢者では重症化することもあります.症状は,咳,熱,鼻水です.多くの場合,咳は1週間程度,熱は4-5日間続きます.重症化すると喘息様気管支炎や細気管支炎を起こし,喘鳴や呼吸困難を生じます.ヒトメタニューモウイルスに対する特効薬はないので,対症療法により軽快,治癒を待ちます.迅速診断キットがありますが,保険適応は6歳未満で肺炎を起こした場合のみです.1年中発症が確認されますが,3-6月に感染者が増加します.今年は9月下旬より流行が再燃しています.

マイコプラズマ感染症:マイコプラズマ感染症は,Mycoplasma pneumoniaeという微生物が原因です.主な症状は,発熱,咳,頭痛,鼻汁,倦怠感です.肺炎を起こすことがあり,「マイコプラズマ肺炎」と呼びます.気管支喘息の発作を誘発することがあります.免疫系が過剰に刺激され,呼吸器以外にも症状を引き起こします.3-4%に中枢神経症状(髄膜炎,脳炎),8-15%に消化器症状(下痢,嘔吐,食欲不振,肝機能異常),3-30%に発疹などを生じることがあり,臨床像は多彩です.治療の第1選択薬はマクロライド系抗菌薬ですが,2000年頃よりこの薬剤が効かない「耐性マイコプラズマ」が増加しています.48時間以上解熱が認められない場合には,フルオロキノロン系抗菌薬(商品名:オゼックス)またはミノサイクリン系抗菌薬(同:ミノマイシン,8歳未満は使用不可)の使用が推奨されています.迅速診断キット,LAMP法または血清抗体価で診断します.マイコプラズマ感染症は2011-2012年に大流行しました.以前は4年に1度流行していましたが,このパターンは崩れています.今年は9月以後に散発的に患者発生がみられます.

百日咳:百日咳は,百日咳菌により起こります.百日咳菌は咳中枢を刺激する毒素を大量に産生するため,咳が激しく且つ長期間続きます.潜伏期間は7-10日間です.最初は普通のかぜのような咳ですが,次第に強くなり,顔をまっ赤にして激しく咳込むようになります.乳児,年少児,典型例では,ゴンゴンゴンゴンと激しい咳き込み,ヒューという大きな息の引き込みがみられます.年長児,成人,非典型例では,咳だけが続きます.通常,熱は出ません.肺炎が5.2%,痙攣が0.8%,脳症が0.1%に起こります.1歳未満の入院例では,1.6%が死亡します.百日咳ワクチンを接種していても数年で抗体が低下するため,百日咳にかかることがあります.日本では百日咳ワクチンは4回接種ですが,欧米諸国では抗体を維持するために5-6回の接種が行われています.近年は,とくに成人の百日咳罹患が問題になっています.発熱がないのに咳が続く,咳き込んで顔を真っ赤にする,咳の勢いで吐いてしまう場合には,百日咳が疑われます.当院では10月初旬に患者発生が確認されています.

咳が続く場合には,上記のような疾患が疑われます.診断には諸検査が必要です.早目に受診してください.