ワクチンというと子どもが受けるものというイメージがありますが,成人でも接種すべきワクチンがたくさんあります.インフルエンザワクチンはすぐに頭に浮かびますし,最近では高齢者に対する肺炎球菌ワクチンが普及してきています.50歳以上の人が接種すべきワクチンとして破傷風ワクチンと水痘(みずぼうそう)ワクチンがありますが,一般にはあまり知られていません.今回はこの2つのワクチンについて述べます.

破傷風は,破傷風菌が産生する毒素の1つである神経毒素(破傷風毒素)により硬直性けいれんを引き起こし,死に至ることもある感染症です.日本では年間100人以上の破傷風患者が報告されていますが,その大部分は高齢者です.破傷風菌は芽胞として世界中の土壌に分布しているため,日常生活で破傷風菌との接触を完全に遮断することは不可能であり,誰でもが感染し得る感染症です.

日本では破傷風ワクチンの接種は3種混合(DPT)ワクチンとして1968年に開始され,その後1994年に定期接種化されました.現在は,4種混合(DPT−IPV)ワクチンとして定期接種されています.2013年に実施された破傷風抗体保有状況の調査では,生後6カ月から44歳までは発症防御抗体レベル0.01IU/mL以上の破傷風抗体保有率は概ね90%以上でした.しかし,破傷風ワクチンの接種を受けていない45歳以上では,抗体保有率は15-40%と低くなっています.現在50歳以上に人は破傷風ワクチンの接種を受けた方がよいでしょう.

水痘(みずぼうそう)は,水痘・帯状疱疹ウイルスの初感染により起こります.水痘は軽症で済むことがほとんどですが,急性小脳失調症,髄膜脳炎,Reye症候群などを合併し,50000人に1人は死に至ります.水痘の経過中にウイルス血症が起こり,水痘・帯状疱疹ウイルスは脊髄知覚神経節や三叉神経節に潜伏感染します.何らかの要因により免疫が低下すると,潜伏していた水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化し,潜伏していた神経細胞の支配領域の知覚神経に沿って帯状疱疹を引き起こします.

2014年10月より水痘ワクチンは定期接種になり,生後12月から生後36月に至る者(=1歳以上3歳未満)に対し,3カ月以上の間隔をおいて2回の接種が行われています.定期接種開始後,それまで毎年みられていた水痘の流行が抑制されました.水痘ワクチンが高齢者の帯状疱疹に対して予防効果があることは従来から知られており,帯状疱疹の発症を51%,帯状疱疹後神経痛を67%減少させることが報告されています.既に,水痘ワクチンから開発され本質的には同じ帯状疱疹ワクチンが,米国や欧州を含む多くの国で承認されています.遅ればせながら日本では2016年3月に水痘ワクチンの適応が拡大され,「50歳以上の者に対する帯状疱疹の予防」に対する効能・効果が追加承認されました.

50歳以上の方で,破傷風ワクチン,水痘ワクチンの接種を御希望の方は当院で接種します.ご相談ください.