世の中には,「絶対悪」なるものが存在します.戦争,原子爆弾と並んで,タバコもその1つです.タバコは人類が創出した最大規模の中毒商品です.近年新型タバコが普及し従来型の燃焼式タバコ(紙巻タバコなど)よりも害が少ないと誤解されているようですが,決してそのようなことはありません.タバコ会社は中毒に陥った喫煙者を手放そうとせず,新たな中毒者を獲得しようと必死です.騙されてはいけません.

新型タバコには,「非燃焼・加熱式タバコ」と「電子タバコ」があります.「非燃焼・加熱式タバコ」には,“葉タバコを直接加熱しニコチンを含むエアロゾルを吸引するタイプ(商品名:iQOS,glo)”と“低温で霧化する有機溶剤からエアロゾルを発生させた後タバコ粉末を通過させてタバコ成分を吸引するタイプで電子タバコに類似した仕組みのもの(商品名:PloomTECH)”の2種類があります.「電子タバコ」は,液体を加熱してエアロゾルを発生させて吸引します.液体にニコチンを含むものと含まないものがありますが,日本ではニコチンを含むものは医薬品医療機器法による規制のため販売されていません.

2017年10月31日,日本呼吸器学会は,「非燃焼・加熱式タバコや電子タバコに対する見解」を公式サイトで発表しました(http://www.jrs.or.jp/uploads/uploads/files/photos/hikanetsu_kenkai.pdf#search=%27).要旨は以下の通りです.

新型タバコの使用は,健康に悪影響をもたらす可能性があります.使用者が呼出したエアロゾルは周囲に拡散し,受動吸引による健康被害が生じる可能性があるため,燃焼式タバコと同様に全ての飲食店やバーを含む公共の場所や公共交通機関での使用は認められません.また,非燃焼・加熱式タバコやニコチン含有の電子タバコには燃焼式タバコと同様に依存性薬物であるニコチンが含まれています.新型タバコは,「煙が出ないあるいは煙が見えにくいので禁煙エリアでも吸える」,「受動喫煙の危険がない」,「燃焼式タバコより健康リスクが少ない」と誤認され,急速な広がりをみせています.日本呼吸器学会は,新型タバコの国民の健康に対する影響や社会的影響について憂慮しています.

燃焼式タバコをやめられない人あるいはやめる意志のない人にとって,新型タバコを代替使用することは健康被害の低減に繋がるとする考え方があります.しかし,現時点で新型タバコの病気や死亡に対するリスクは不明です.

非燃焼・加熱式タバコの主流煙中には,燃焼式タバコとほぼ同じレベルのニコチンや揮発性化合物(アクロレイン,ホルムアルデヒド),約3倍のアセナフテン(多芳香環炭化水素物)等の有害物質が含まれています.ニコチン入り電子タバコ使用者から検出されるニコチン代謝物は燃焼式タバコ使用者とほぼ同量で,タバコ特異的ニトロソアミンの尿中代謝物は燃焼式タバコ使用者よりも少ないと報告されています.しかし,体内に有害物質を取り込むことにかわりはありません.加熱によりエアロゾルを発生させるとニコチン以外の成分が分解され,発癌性物質に変化することが指摘されています.葉タバコを加熱してエアロゾルを発生させる電子タバコは,燃焼式タバコと同様に,土壌中に蓄積している放射線元素のポロニウムを含んでいます.

新型タバコは燃焼式タバコに比べ,煙が出ないかあるいは煙が見えにくいとされています.しかし,非燃焼・加熱式タバコ使用者の呼気に特殊なレーザー光を照射すると,大量のエアロゾルが描出されます.新型タバコは大量の“見えにくいエアロゾル”を発生し,周囲の人々への受動喫煙を起こします.世界保健機構は,電子タバコの煙中の(1)ニッケルやクロムなどの重金属濃度は燃焼式タバコより高い,(2)PM2.5,ニコチン,アセトアルデヒド,ホルムアルデヒドの濃度は燃焼式タバコよりは低いが通常の大気中濃度のそれぞれ14-40倍,10-115倍,2-8倍,1.2倍であり,「電子タバコのエアロゾルにさらされると,健康に悪影響がもたらされる可能性がある」「受動喫煙者の健康を脅かす可能性があると考えることが合理的である」と述べています.

新型タバコは,従来の燃焼式タバコに比べてタール(タバコ煙中の有害物質のうちの粒子成分)が削減されていますが,依存性物質であるニコチンやその他の有害物質を吸引する製品です.非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用は推奨できません.