酸性,アルカリ性というのは,水溶液(物質を水に溶かした液)の性質を表す言葉です.水の分子式はH2Oです.ほとんどはH2Oという非常に安定した形で存在しますが,ごく一部は水素イオンH+と水酸化物イオンOH-に分かれて存在しています.これらのバランスが酸性,アルカリ性を決定し,H+が多いと酸性,OH-が多いとアルカリ性になります.お酢のようにすっぱい味のするものは酸性,灰汁(あく)のように苦い味のするものはアルカリ性です.酸性,アルカリ性の程度を表すものがpHです.pH7が中性,それ未満が酸性,それより大きい場合がアルカリ性です.pHが小さいほど酸性が強く,大きいほどアルカリ性が強くなります.水道水は概ねpH7で,中性です.

私たちの身のまわりには,酸性の飲み物=酸性飲料がたくさんあります.代表的なものが,炭酸飲料,乳酸飲料,果汁ジュース,スポーツドリンク,イオン飲料,飲むお酢などです.果汁入り天然水(フレーバーウォーター)は果汁を含むためpH値が低いものがほとんどで,酸性飲料の仲間です.これら市販されている酸性飲料の多くは,pH3からpH5です.

酸性飲料を頻繁に摂取すると,歯の表面のエナメル質からカルシウムやリンなどが溶け出してしまいます.この現象を「脱灰」と呼びます.むし歯で見られる現象と同じです.酸性飲料には糖分も含まれています.歯の表面に付着したプラーク(歯垢)には,ミュータンス菌などのむし歯の原因菌が住んでいます.頻繁に摂取すると,ミュータンス菌などが糖を分解して酸を発生し,さらに虫歯になりやすくなります.

子どもが発熱や下痢で脱水を起こした場合や激しい運動をして大量に汗をかいた時には,イオン飲料やスポーツドリンクなどの摂取が必要になります.しかし,体調が回復した後や汗をかかない時には,これらの酸性飲料を水代わりに飲み続けてはいけません.日中にコップ1杯程度の酸性飲料を飲んでも,口腔内には唾液が存在するので心配ありません.しかし,乳幼児が哺乳瓶やマグカップなどで酸性飲料を習慣的に摂取すると,歯,特に上の前歯の脱灰が起こり,虫歯の発生につながるので注意が必要です.

酸性飲料の多くは,ほんのりと甘酸っぱく,おいしく感じるように作ってあります.乳幼児期からこの味に慣れてしまうと,水,麦茶,牛乳などを飲まなくなってしまいます.体調が良い時には,水で十分です.酸性飲料をむやみに与えてはいけません.たくさん汗をかいて喉が渇いた時には,まずは水,白湯,麦茶を与えてください.喉が渇いている時には,ただの水でも十分美味しく感じるものです.もし,酸性飲料の味に慣れてしまって水などを飲まなくなってしまった場合には,中身を薄める,飲む回数を減らすなどの工夫をしてみてください.

酸性飲料を習慣的に飲まないことに加えて,歯みがきもむし歯予防に大切です.子どもの歯を守ってあげましょう.