2017年11月下旬より,当院周辺ではA型インフルエンザが流行しています.例年よりも4-6週間早い流行開始です.

近年,インフルエンザワクチンの効果はTest-negative Case-control Design(TNCC:診断陰性例コントロール試験)という方法によって調査されています.世界各国から毎シーズン2回,TNCCによる調査結果が発表されています.1月中に速報が出され,効果があると判定されれば接種勧奨が行われ,流行後に最終報告が出されます.

日本でTNCCを用いて2013/14から2015/16シーズンの3シーズンに12888例の患者を対象にインフルエンザワクチンの効果を検討したところ,小児全体では45%の発病防止効果がありました.インフルエンザの型別では,A型51%,B型32%で,B型では効果が低くなっていました.年齢階層別には,0歳ではA型12%,B型30%,1-2歳ではA型63%,B型43%,3-5歳ではA型64%,B型44%,6-12歳ではA型38%,B型31%,13-15歳ではA型29%,B型36%で,0歳児では効果が低く,1歳以上では効果が高いという結果でした.入院防止効果は,2013/14シーズンはA型76%,B型0%,2014/15シーズンはA型55%,B型解析不可,2015/16シーズンはA型57%,B型34%でした.A型は3シーズン通じて効果があり,B型は4価ワクチン導入後に効果が認められました.インフルエンザワクチンには,発病防止効果および重症化(=入院)防止効果があるという結果でした.

以前実施された研究では,抗インフルエンザ薬のタミフルの投与では罹病期間が17時間短縮するだけで,入院防止や肺炎防止の効果はないとされていました.一方,最近の海外における成人を対象にした研究では,タミフルの投与で罹病期間が25.2時間短くなっていました.日本おける研究では,有熱期間がタミフル投与群で1.4日,非投与群で2.5日で,27.4時間短くなっていました.タミフル投与により入院は63%,肺炎などの下気道感染が44%減少したという報告もあり,成人ではタミフルの有効性が確認されています.最近の小児における研究では,タミフルは罹病期間を17.6時間短縮し,中耳炎の合併を34%減らしていました.A/H1N1pdm09の流行期における3万人を対象にした研究では,抗インフルエンザ薬の使用により入院および死亡数が減少していました.抗インフルエンザ薬を用いて早期治療を行った場合には,死亡リスクが全体では52%,妊婦では84%減少していました.

日本では迅速診断キットが広く用いられていて,発熱から48時間以内に抗インフルエンザ薬による治療が開始されています.軽症患者を含めて早期に治療を開始するため,ほとんどの患者が治癒に至ります.迅速診断キットは感度がやや低い,A/H1N1pdm09とA/H3N2の区別が十分にできない,機械でなく目視判定であるなどが問題点として指摘されていますが,その有用性についてはWHOの専門家会議でも一致しています.

一方,欧米の医療保険制度では,日本のように早期の診断や治療開始ができません.迅速診断キットが十分に使用されていないため正確な診断に至らず,抗インフルエンザ薬が適切に投与されていません.発熱から48時間以上経過した重症患者を治療しているために,抗インフルエンザ薬の効果は不明になってしまっています.米国の有名大学病院における小児のインフルエンザの治療方針には自宅における安静が基本で,発熱が4-5日続く,呼吸困難,チアノーゼ,摂食不可,精神状態がおかしい場合に受診するように記載されています.米国では48時間以内に受診したハイリスク患者や高齢者でも,30%にしか抗インフルエンザ薬が処方されていません.欧米では治療開始が遅れてしまっていて,インフルエンザによる死亡が多くなっています.

インフルエンザワクチンは有効ですが,発病防止効果は50%程度です.インフルエンザワクチンにだけ頼るのは危険です.インフルエンザワクチンと抗インフルエンザ薬早期使用の2本立てで,インフルエンザに対応しましょう.