貧血とは,血液中の赤血球あるいはヘモグロビンが減少した状態です.赤血球やヘモグロビンは血管の中を流れて,酸素を全身に運んでいます.

子どもの貧血で最も多いのは,鉄欠乏性貧血です.乳児期後半から2歳までの間と思春期が,鉄欠乏性貧血になりやすい時期です.乳児の10-20%,中学生女子の10%以上が鉄欠乏性貧血であるという報告があります.乳幼児では,急激な身体発育,離乳食開始や移行の遅れが原因です.母乳には鉄分が少ないため,母乳栄養では特に注意が必要です.人工栄養であっても,鉄の吸収率はよくないでのやはり注意が必要です.思春期では,身体の著しい成長,運動部での厳しい練習,やせ志向のダイエット,生理の発来,ストレスによる胃や腸からの出血などが原因になります.生理発来後の女性は特に注意が必要です.

鉄欠乏性貧血で最初に現れる症状は,顔色の不良です.しかし,貧血は徐々に進むので,普段から接していると気付くのは困難です.肌の色には個人差があり,顔色だけでは判断できません.口唇,眼瞼結膜,爪などの赤みが乏しくなる場合があるので,確認してみてください.日本人を含む黄色人種では,貧血により皮膚が少し黄色く見えることがあります.貧血が進むと,活動性の低下,息切れ,動悸が現れます.乳幼児の鉄欠乏状態は発達や知能に影響を与えることが報告されています.鉄剤の内服により泣き入りひきつけが改善したという報告があります.思春期の鉄欠乏性貧血では,運動能力や学業成績の低下,落ち着きのなさ,集中力の低下,むずむず脚症候群,氷を好んで食べる氷食症が現れることがあります.

鉄欠乏性貧血の場合,鉄剤を3カ月以上内服します.鉄剤内服後,貧血自体は速やかに改善します.しかし,貯蔵鉄の十分な補充のためには数カ月間の鉄剤の内服が必要です.

鉄欠乏性貧血のほかにも,様々な原因で貧血が起こることがあるので注意が必要です.感染症が長引くあるいは繰り返す,何らかの慢性疾患がある場合にも貧血になることがあります.小児ガンや白血病で貧血になる場合には,発熱,手足の痛み,あざや鼻血,元気のなさなどを伴うので注意が必要です.生まれながらの病気で貧血になる場合もあります.例えば,溶血性貧血では赤血球が壊れやすく,貧血とともに黄疸が出現します.

貧血の診断には,血液検査が必要です.乳幼児でも血液検査は可能です.少量の血液でかなりの情報が得られます.貧血の有無だけでなく,貧血の原因をはっきりさせることが大切です.

大量の吐血や血便あるいは鼻血が止まらずに,顔色や皮膚色が蒼白の場合にはすぐに受診する必要があります.

立ちくらみやじっと立っていて気分が悪くなる場合に,俗に「脳貧血」と言うことがあります.これは必ずしも貧血によって起こるわけではなく,低血圧によることが多いので,貧血とは区別をして考えましょう.

顔色が悪い,元気がない,運動すると息切れがするなどの症状がある場合には,当院にご相談ください.