アトピー性皮膚炎における治療では,保湿剤によるスキンケア,ステロイド外用薬およびプロトピック軟膏による抗炎症療法が主役になります.外用薬の効果を高めるためには,塗り方に注意が必要です.主な注意点は以下の通りです.

お風呂やシャワーでからだを洗ったら,すぐに外用薬を塗ってください.石鹸やシャンプーを使うと汗や汚れとともに皮脂も落ちてしまいます.せっかく塗った外用薬も落ちてしまいます.入浴すると皮膚温が高くなるので,時間が経つと皮膚が乾燥してしまいます.すぐに保湿剤を全身に塗布しましょう.ステロイド外用薬やプロトピック軟膏も保湿剤に前後して塗ってください.

外用薬を皮膚にゴシゴシと刷り込む必要はありません.外用薬は刷り込むよりも,むしろ上に乗っているだけの方がよく効きます.ただし,しっかり伸ばすことは大切です.

保湿剤とステロイド外用薬の混合処方は好ましくありません.混合処方された外用薬の有効期間に関するデータはありません.3カ月以内が目安で,それ以上経ったものは破棄してください.容器内で分離した場合にも破棄をしなければいけません.混合処方の場合には,大きなカップで処方されます.何度も指を突っ込むことになるので,外用薬が汚染されてしまいます.衛生上好ましくありません.保湿剤とステロイド外用薬は別々に処方を受けましょう.

30℃以上の気温は軟膏の品質を損ねます.夏場は冷蔵庫に保管した方がよいでしょう.

大きな容器に入った保湿剤は,専用スプーンで取り分けてください.保湿剤を汚染しないように注意しましょう.

外用薬の使用量については,「finger-tip unit(FTU)」という概念を知っていると便利です.1FTUは直径5mmのチューブから押し出される,成人の人差し指の指腹側末梢部の長さの量で(最先端から1番目の関節まで,約25-28mm),概ね0.5gに相当します.1FTU(0.5g)が両手掌(両手のひら=体表面積の2%)の面積の皮膚に塗る1回量です.1FTUを指先に載せるように出して,数カ所にチョンチョンと分けて置き,その後よく伸ばします.適量を塗った後の皮膚表面は,テカテカと光ります.テカテカしない場合には,塗布量不足です.外用薬のチューブの口径には差があるので注意してください.保湿剤のヒルドイドソフトは口径が5mmですが,ステロイド外用薬の5gチューブは4mmなのでやや少なめになってしまいます.プロトピック軟膏の口径はさらに細いので,2FTUが0.5gです.ステロイド外用薬やプロトピック軟膏は,ゆっくり太めにあるいは長めにチューブから出してください.

外用薬を塗る時には,皮膚のしわをよく伸ばしてください.肘の外側は肘をしっかり曲げて,肘の内側は肘をしっかり伸ばして塗ってください.膝の外側,内側も同じです.手首や足首などの関節部も塗りにくいので,注意が必要です.手背や指の外側は塗りにくいので,グーにした左手をパーにした右手で包むようにして塗りましょう.腰のまわり,脚の付け根,パンツのあたる部位もしわを伸ばして塗ってください.目の周りは上から下へ,中央から外側へ塗ってください.耳の裏側は,耳介をしっかり倒して塗ります.耳の周りは下から上へ塗ると耳切れを防ぐことができます.「お」の口をすると,口角のしわがよく伸びます.「ん」に口をすると,唇の下のしわががよく伸びます.頭皮にローション製剤を塗る時には,手ぐしで分け目をつけてから塗るとよいでしょう.

保湿剤とステロイド外用薬またはプロトピック軟膏は,どれを先に塗っても構いません.多少の外用薬が目や口に入っても,特に問題はありません.外用薬は基本的には1日2回の塗布が必要です.忙しい朝であっても,しっかり塗ってあげてください.

日焼け止めは使用しても構いませんが,皮膚に外用薬がよく馴染んでしばらくしてから塗りましょう.