各種のウイルスは,気管支喘息の発症に重要な役割を演じています.また,喘息発作を誘発し,気管支喘息の増悪因子としても重要です.

気管支喘息の発症に関わるウイルスとしては,RSウイルスとライノウイルスがよく知られています.これらのウイルスは乳幼児期にアレルゲン感作や反復性喘鳴を引き起こし,その後の喘息発症に関連すると考えられています.

RSウイルスは代表的な咳風邪ウイルスです.乳幼児が感染した場合には7割は咳風邪で終わりますが,3割は肺炎,中耳炎,喘鳴などを起こします.乳児期に感染すると細気管支炎を起こし,呼吸困難に陥ることがあります.乳幼児期にRSウイルスによって気管支炎や肺炎を起こした場合には,気道過敏性の亢進,呼吸機能異常,反復性喘鳴が起こり,その後の喘息発症に繋がります.1歳未満で入院を要するRSウイルス細気管支炎に罹患した児は7歳時点で約半数が気管支喘息を診断されていた,などの報告があります.また,アトピー素因のない低出生体重児に抗RSウイルスヒト化モノクローナル抗体を投与すると反復性喘鳴の発症を抑制することから,RSウイルスが気管支喘息の発症に関わっていることは確かです.RSウイルスに感染した児が気管支喘息を発症しやすくなる機序については,児の免疫応答が元来不十分でIFN-γの産生が不良,RSウイルス感染により児の免疫系のバランスがI型アレルギーに傾く,などの報告があります.

ライノウイルスは代表的な鼻風邪ウイルスです. 3歳までにライノウイルスに感染した児では6歳時点での気管支喘息のリスクが高くなり,気管支喘息との関わりはRSウイルスよりもライノウイルスの方が強いことが報告されています.近年の研究では,17番染色体に存在する遺伝子やライノウイルス受容体の遺伝子多型がライノウイルスにより誘発される気管支喘息のリスクと関連していることが報告されています.

小児の気管支喘息の発作時には約80%の患者の鼻汁からウイルスから検出され,RSウイルス,ライノウイルス,エンテロウイルスの検出頻度がとくに高いです.このほか,喘息の増悪に関わるウイルスとしては,インフルエンザウイルス,ヒトメタニューモウイルスなどが知られています.

RSウイルスは乳幼児における気管支喘息の増悪因子です.ウイルス株により喘息発作の起こりやすさに違いがあることが報告されています.

ライノウイルスは,小児の喘息発作で最も高率に検出されるウイルスです.主に春と秋に流行します.ライノウイルスはA型,B型,C型に分類されますが,A型とC型が喘息発作を誘発しやすく,とくに重症患者から検出されます.

エンテロウイルスは,喘息発作時に検出されるウイルスとしてはライノウイルス,RSウイルスに次いで多いことが知られています.2015年秋に流行したエンテロウイルスD68型は,急性弛緩性麻痺とともに重症喘息発作を誘発しました.

インフルエンザウイルスは上記の3つのウイルスに比べると,喘息発作を誘発することは少ないです.しかし,気管支喘息患児は健常児に比べてインフルエンザに罹患した際に外来受診や入院が多くなる傾向があります.また,2009年に世界的大流行を起こしたH1N1インフルエンザウイルスは,喘息発作を高率に誘発しました.

ヒトメタニューモウイルスは咳風邪ウイルスに1つです.発熱が5-7日間,咳が1-2週間続きます.肺炎,中耳炎とともに喘息発作を誘発することがあります.

このほか,パラインフルエンザウイルス,アデノウイルス,コロナウイルス,ボカウイルスなども喘息発作を誘発します.