アレルギー性疾患は,最初にアトピー性皮膚炎が発症し,その後に食物アレルギー,気管支喘息,アレルギー性鼻炎,アレルギー性結膜炎などが出現することが多く,これをアレルギーマーチと呼びます.アトピー性皮膚炎の発症や増悪を防ぐことは,その後の各種アレルギー性疾患の発症を抑制することに繋がります.

アトピー性皮膚炎に対して早期介入を行い,発症や増悪を防ぐための研究が行われています.

掃除を丁寧にすることは大事ですが,環境中のダニの量を減らしてもアトピー性皮膚炎の発症を減らすことはできません.妊娠中や授乳中の母が食物制限をしても,児のアトピー性皮膚炎の発症は減りません.

家系内にアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患があるハイリスク児に,出生1週以内に1日1回以上の保湿剤の全身塗布を開始すると,その後のアトピー性皮膚炎の発症を32%抑制できます.一方,他のアレルギー性疾患の発症予防ができるか否かについては現時点では不明です.ただし,アトピー性皮膚炎を発症しているのに湿疹病変を無治療で放置した場合には,卵白感作が有意に増加し,そのリスクが2.86倍になります.

皮膚バリア機能の評価には,経皮水分蒸散量(TEWL)の測定が有用です.TEWLが高値を示す場合には皮膚から逃げる水分量が多く,皮膚バリア機能の低下を意味します.額(ひたい)の部分(=前額部)のTEWLが高い場合には,アトピー性皮膚炎を高率に発症します.前額部TEWLはアトピー性皮膚炎の発症の予測因子として,現時点では最も有用です.前額部TEWLが高い児に保湿剤の定期塗布を行うと,アトピー性皮膚炎の発症を予防することができます.

アトピー性皮膚炎の病勢の指標として,血中TARC(thymus and activation-regulated chemokine)の測定が有用です.TARC高値は皮膚におけるアレルギー性炎症が強いことを示唆します.アレルギー性疾患では好酸球性炎症が生じ,白血球の1つである好酸球の数が増加します.臍帯血中のTARC高値や生後1カ月時の血中の好酸球数が多い場合には,アトピー性皮膚炎の発症率が高くなります.こうした児に保湿剤やステロイド外用薬を塗布すると,アトピー性皮膚炎の発症を抑制できるかもしれません.

妊娠中の母の血中ビタミンD濃度が高い,妊娠中の母の魚油摂取が多い,乳児期の魚の摂取量が多いと,小児期のアトピー性皮膚炎を減らすことができるという報告があります.

日本を含む先進国ではアレルギー性疾患が増加しています.衛生的な環境下で育つと細菌やウイルスによる感染暴露の機会が減ってしまい,免疫系がバランスよく発達せずにアレルギー性疾患を発症しやすくなります.これを「衛生仮説」と呼びます.生まれた時の兄弟姉妹が多いと感染暴露の機会が増えるため,アトピー性皮膚炎の発症が少なくなります.スウェーデンにおける7-8歳の1029名を対象にした研究では,食器を手洗いしている家庭では自動食器洗い器を使用している家庭よりも児のアトピー性皮膚炎の発症が少ないと報告されています.手洗いでは汚れがうまく落ちず,細菌暴露の機会が増えるからです.

妊娠後期から母に,出生後は母と児に,乳酸菌やビフィズス菌を与え続けると.児のアトピー性皮膚炎の発症が減ると報告されています.プロバイティクスにより腸内細菌叢が改善すると,免疫系がアレルギー性疾患を発症しにいくように調節されると考えられています.ただし,研究によって用いられた菌種が異なり,プロバイオティクスのアトピー性皮膚炎発症予防効果を否定する研究結果もあることから,未だ結論には至っていません.

妊娠中の母の抗菌薬使用は児の1歳6カ月時点でのアトピー性皮膚炎を増やすと報告されています.また,乳児期の抗菌薬の使用回数と小児期のアトピー性皮膚炎の発症リスクが比例するという報告もあります.

アトピー性皮膚炎に対する早期介入について様々な研究がなされています.今後の展開に注目しましょう.