赤ちゃんの便に血液が混じっていた,という訴えで受診する方がいます.赤いものが必ずしも血液とは限りません.離乳食の中に入っていたトマトの皮が,未消化のまま排泄されただけの場合もあります.まず,血液かどうかを確かめることが大切です.おむつごと持参するか,スマートフォンなどで撮影して診察時に画像を見せてもらうと診断に役立ちます.

生後6カ月くらいまでの赤ちゃんで,機嫌がよく,哺乳も良好で,体重増加が十分な場合には,便に線状あるいは点状の新鮮血が少量混じっていても,まず心配はありません.母乳血便,リンパ濾胞増殖症,裂肛などの軽微な疾患が考えられます.

母乳血便は,母乳または混合栄養の赤ちゃんに起こります.赤ちゃんの腸管粘膜は傷みやすく,母乳は人工乳に比べ軟便になりがちで,肛門周囲や直腸には軽度のびらんができやすい状況にあります.血便はごく少量で,自然に軽快します.特別な治療は不要で,母乳は続けて構いません.

リンパ濾胞増殖症は,何らかの免疫反応を背景に直腸粘膜の上皮細胞の回転が亢進し,組織学的にはリンパ濾胞の過形成(1-4mmの隆起した白色調の粘膜結節)および粘膜固有層の好酸球数の増加が観察され,直腸粘膜から出血します.原因としては,食物に対するアレルギー,腸内細菌叢,母乳中免疫活性物質などが挙げられていますが,詳細は不明です.便性は普通,出血量はごく僅かで,全身状態は良好です.経過観察のみで数カ月で自然に治癒します.食物制限などの特別な治療は不要です.

裂肛は,便が硬いために肛門が切れる病態です.離乳食が進むと便性が変化し,便が硬くなる場合があります.排便時に痛みで泣くことがあります.痛みのために排便を嫌がり,便がさらに硬くなり,大きな裂け目ができるという悪循環に陥ります.肛門部に慢性的な炎症が生じ,裂肛付近の皮膚の一部が盛り上がってお尻に挟まれ,ニワトリのトサカのようになることがあります.浣腸で排便を促し,下剤で便を軟らかくするなどの治療が必要です.

上記のような疾患では血便は少量です.血便の量が多く全身状態が不良な場合には,以下のような重篤な疾患が考えられます.

腸重積は,腸が腸の中にはまり込む病気です.生後6カ月から2歳頃までに発症しやすく,10-30分おきに泣き,激しい嘔吐,血便,極端な不機嫌などの症状が出現します.血便はイチゴジャムのように真っ赤で,多量です.病初期には血便が認められず,嘔吐も軽い場合があるので注意が必要です.

細菌性腸炎では,発熱,腹痛,嘔吐,下痢とともに血便を呈する場合があります.母乳または人工乳だけの場合には,罹患率は低いです.便培養により起因菌を同定します.

ロタウイルスやノロウイルスなどによる腸炎では,嘔吐とともに水様性の激しい下痢を呈することがあります.赤ちゃんでは腸管免疫が未熟なために嘔吐や下痢が続き,腸管粘膜や肛門周囲の損傷のために血便を伴う場合があります.迅速診断キットにより,抗原検出が可能です

このほか,新生児-乳児消化管アレルギー,メッケル憩室,若年性ポリープ,家族性大腸ポリポーシス,腸回転異常症,消化管穿孔,腸管重複症,ヒルシュスプルング病,壊死性腸炎などでも血便を呈しますが,稀です.

赤ちゃんに血便がみられた場合には,当院にご相談ください.