花粉症といえば,春のスギ花粉症が有名です.スギ花粉症の時期が終わったのに眼がかゆい,鼻汁やくしゃみが出る場合には,夏の花粉症が疑われます.

初夏の花粉症の原因としては,ブナ目樹木が知られています.ブナ目には,ブナ科ブナ属のブナやコナラ属のコナラやクヌギ,カバノキ科カバノキ属のシラカンバやハンノキ属のハンノキやヤシャブシなどがあります.ドングリのなる木がブナやコナラです.ブナ目樹木は全国各地に自生しており,これらの花粉に接する機会は日常的です.花粉飛散時期は,ブナ,コナラは4-5月,クヌギは5月,シラカンバは4-6月,ハンノキは1-4月,ヤシャブシは3月です.ブナ目樹木のなかには花粉飛散時期がスギやヒノキと同時期のものがあるため,ブナ目樹木の花粉症は見過ごされることが少なくありません.ブナ目樹木の花粉間には強い交差反応性があり,シラカンバ花粉症がある場合にはハンノキ花粉症も発症する場合があります.

ブナ目樹木の花粉は,バラ目バラ科果実との交差反応があります.ブナ目もバラ目も双子葉植物網に含まれるからです.シラカンバ花粉症やハンノキ花粉症では,バラ目バラ科リンゴ属のリンゴやモモ属のモモなどの果実に対する口腔アレルギー症候群(OAS)を合併することが知られています.日本では,シラカンバが自生する北海道を中心にシラカンバ花粉症とリンゴやモモのOASが報告されてきました.最近になり,シラカンバが自生していない北海道以外の地域でも,ハンノキ花粉症とOASが報告されています.

OASは,即時型アレルギーの特殊型に分類されます.原因アレルゲンは果物や野菜のことが多く,これらが口腔粘膜に接触することで体内に吸収され症状が発現します.主な症状は口および周辺のかゆみ,喉の違和感(=イガイガ感)などで,比較的軽症であることが特徴です.しかし,ときに著しい口唇の腫脹や喉頭浮腫による閉塞感を訴え,まれに全身の蕁麻疹やアナフィラキシーなどの重篤な症状を呈する場合があります.果物や野菜を食べると口の中がイガイガする,なんとなく食感が良くないため果物や野菜が嫌いな場合には,OASが疑われます.果物や野菜を用いたprick to prick testなどが診断に有用です.

夏の花粉症としては,イネ科植物(ハルガヤ,カモガヤ,オオアワガエリ,ギョウギシバなど)がよく知られています.花粉飛散時期は4-11月(ピークは5-6月と10月の2峰性)です.カモガヤは牧草として広く栽培され,土留めとして高速道路沿いに植えられています.オオアワガエリは牧草として広く栽培されているほか,道端や川べりに自生しています.ギョウギシバは日当たりのよい道端,荒れ地,堤,海岸などに群生しています.イネ科花粉はアレルギ−性鼻炎・結膜炎だけでなく,一部の患者では気管支喘息の原因になります.イネ科花粉感作症例は,スギ,ヒノキに次いで多いと報告されています.

このほか,夏のアレルゲンとしては,4-11月(同6月と9-10月の2峰性)の真菌(アルテルナリア,アスペルギルス,クラドスポリウムなど)や4-12月(同6月と10月の2峰性)の昆虫(ガ,ユスリカなど)も重要です.

スギ花粉症の時期が終わって夏を迎えたのに,目がかゆい,くしゃみが止まらない,鼻汁がいつも出ている,鼻がムズムズする,鼻が詰まる,などの症状がある場合には,当院に是非ご相談ください.適切に診断,治療します.