夏には,汗や汚れによりアトピー性皮膚炎が悪化することがあります.特に,汗の溜まりやすい肘の内側,膝の裏側,首,耳の付け根などは夏季に悪化します.

アトピー性皮膚炎の汗による悪化は,経験的によく知られていました.近年の研究で,この現象は汗によるI型アレルギー反応によるものであり,精製された汗抗原の本態はマラセチア属という真菌の1つである M.globosaの分泌蛋白であることが明らかになりました.マラセチア属は14菌種が同定されており,ヒトの皮膚からは9菌種が検出され,アトピー性皮膚炎患者からはM.globosa,M.restrica,M.sympodialisが高率に検出されます.

汗による悪化を防ぐには,風通しがよく涼しいところで過ごす,汗をかいたらすぐに拭き取るあるいは着替える,シャワーを浴びて汗をよく洗い流す,などの注意が必要です.都道府県によっては学校に温水シャワーを設置し,アトピー性皮膚炎患者には体育授業やクラブ活動などで汗をかいた後に使用させているところもあります.

皮膚を洗う場合には,しわをよく伸ばして洗うのがポイントです.しわのできやすい部位には汗が溜まりやすいので,念入りに洗わないといけません.肘の外側は肘をしっかり曲げて,肘の内側は肘をしっかり伸ばして洗ってください.膝の外側,内側も同じです.手首や足首は関節の屈曲伸展を繰り返しながら,よく洗ってください.手背や指の外側も洗いにくいので,グーにした左手をパーにした右手で包むようにして洗いましょう.背中を洗う時には,首を前に倒し腰をよく曲げてから洗いましょう.腰のまわりや脚の付け根を洗う時にも腰をしっかり曲げて洗いましょう.パンツのあたる部位もしわを伸ばして洗いましょう.顔を洗う場合には十分に泡立てから洗うのがポイントです.皮膚表面をすぐに流れるような泡では,目や口に入ってしまい,子どもが嫌がります.まず,額,頬,顎を洗います.その後,目の周りを洗いますが,上から下に瞼を閉じるように洗ってください.耳の裏側は汚れが溜まりやすいので,耳介(耳たぶ)を前方にしっかり倒して洗いましょう.耳の付け根は特に丁寧に洗いましょう.

保湿剤,ステロイド外用薬,プロトピック軟膏を塗る時も,皮膚のしわをよく伸ばしてください.

アトピー性皮膚炎では皮膚バリア機能が低下・破綻しているため,皮膚感染症に罹患しやすくまた広がりやすくなります.あせも,虫刺され,傷を放置すると,伝染性膿痂疹(とびひ)になることがあります.とびひになると膿(うみ)をもった水ぶくれが,体のあちらこちらにできます.鼻からとびひが始まることがよくあります.とびひの原因菌の90%は黄色ブドウ球菌です.子どもの鼻の中や爪の先には黄色ブドウ球菌がいます.鼻をよくかみ,爪を短く切ることは,とびひの予防になります.手洗いの際には,指先もせっけんでよく洗いましょう.あせもや虫刺され,傷はすぐに治療をしましょう.伝染性軟属腫(水いぼ)は夏に特別増えるわけではありませんが,プールや水遊びで裸になる機会が増えるため目立ちます.つぶすと白い塊が出てきます.この中に水いぼのウイルスが含まれていて,かくと広がります.アトピー性皮膚炎では水いぼが広がりやすいです.水いぼの数が少ない場合には局所麻酔薬テープを使用してのピンセット摘除術が,広がってしまって数が多い場合にはヨクイニンの内服がいいでしょう.

気温や湿度の上昇とともに,汗や汚れによるアトピー性皮膚炎の悪化が目立つようになります.当院では多くのアトピー性皮膚炎患児を治療しています.皮膚症状悪化時には,早めに受診してください.適切に治療します.