ネコとイヌは代表的なペットで,家庭でよく飼われています.このため,これらに対するアレルギーは日常診療でよく経験されます.

ネコのアレルゲンは,現在Fel d 1からFel d 8の8つが同定されています. Fel d 1は主にネコの皮脂腺で産生され,顔,首,腋の下,尾の付け根に多く分布しています.皮脂腺からのFel d 1の産生は男性ホルモンであるテストステロンで増強されます.このため,オスはメスに比べFel d 1の量が多いことが知られています.ネコアレルギー患者の90%以上が抗Fel d 1 IgE抗体を持っていて,Fel d 1は最も重要なネコアレルゲンです.Fel d 2はネコのアルブミンで,他の動物のアルブミンと高い交差反応性を有します.ネコアレルギー患者の抗Fel d 2 IgE抗体陽性率は17%に過ぎませんが,約2%のネコアレルギー患者はFel d 1よりもFel d 2に強く反応することが知られています.Fel d 3はネコの皮膚組織由来のアレルゲンで,ネコアレルギー患者の抗Fel d 3 IgE抗体陽性率は60-90%です.Fel d 4はネコの下顎唾液腺由来のアレルゲンで,ネコアレルギー患者の抗Fel d 4 IgE抗体陽性率は65%です.このほか,Fel d 5w,Fel d 6w,Fel d 7,Fel d 8がネコアレルゲンとして報告されています.

イヌアレルゲンは,現在Can f 1からCan f 6の6つが同定されています.Can f 1はイヌの舌上皮組織から分離されたアレルゲンで,唾液腺や皮膚に存在します.オスの方がメスよりもCan f 1の量が多いことが知られています.イヌアレルギー患者の90%以上が抗Can f 1 IgE抗体を持っていて,Can f 1は最も重要なイヌアレルゲンです.Can f 2はイヌの耳下腺から同定されたアレルゲンで,イヌアレルギー患者の抗Can f 2 IgE抗体陽性率は23%です.Can f 3はイヌのアルブミンで,イヌアレルギー患者の抗Can f 3 IgE抗体陽性率は35%程度です.このほか,Can f 4,Can f 5,Can f 6がイヌアレルゲンとして知られています.

家庭内でネコやイヌを飼っている場合には,室内塵(チリ)中のダニ主要アレルゲンDer1・Der2量を1とすると,ネコ主要アレルゲンFel d 1は59倍,イヌ主要アレルゲンCan f 1は50倍存在することが知られています.また,過去にネコを飼ったことがない家庭においても微量のネコアレルゲンが存在するため,ネコの飼育歴がない人でもネコアレルギーになることがあります.集合住宅でネコを飼っている家庭がある場合や過去にネコを飼ったことがある家庭においては,比較的多量のネコアレルゲンが存在します.また,公共機関や交通機関でもネコやイヌなどのアレルゲンが分離されることがあり,飼育者の衣服などに付着してアレルゲンが運ばれているようです.ネコやイヌを飼育している家庭では,室内塵中だけでなく空気中にも大量のネコアレルゲンやイヌアレルゲンが浮遊していて,その濃度はダニアレルゲンのそれぞれ154倍,463倍に達することが知られています.ネコアレルゲンは粒子径が小さく長時間空気中に存在するため,気管支に侵入して喘息発作を誘発します.

ネコやイヌなどのペットアレルギーの対策としては,これらの飼育を止めることが最も効果的です.しかし,実際には愛着があるために飼育を止めることは困難です.野外での飼育もある程度の効果はありますが,万全ではありません.ペットのアレルゲンは数カ月間残存するため,飼育を止めてもすぐにアレルギー症状が消失するわけではありません.

ペットアレルギーの対策としては,以下がある程度有効です.
(1)ペットを飼う場所を限定し,ペットアレルギー患者の部屋にはペットを入れないようにしてください.ペットを飼育する部屋の床は,掃除をしやすいフローリングが望ましいです.
(2)ペットを定期的に水や温水で洗うことで,アレルゲンの量を減らすことができます.ネコやイヌは1週間に2回程度洗う必要があります.
(3)寝具はペットアレルゲンに汚染されやすいです.寝具を水洗いすることにより,ネコアレルゲンを95%以上減らすことができます.定期的な寝具の水洗いは,睡眠中のペットアレルゲンの暴露量を減少させる効果があります.
(4)ペットアレルゲンは粒子径が小さいために空気中に浮遊している時間が長く,空気清浄機の使用はペットアレルギーの対策として有用です.最近の空気清浄機は性能が向上しており,短時間で効率よく室内の浮遊アレルゲンを減少させることができます.

ネコやイヌなどに近付くと,くしゃみや鼻が出る,目が痒くなる,目の周りが真っ赤になる,咳き込むなどの症状がある場合には当院にご相談ください.適切に診断,治療します.