毎年,夏になると流行する子どもの病気があります.流行規模はその年により異なりますが,主なものは以下の通りです.

1.手足口病
乳幼児で流行する夏かぜの一種です.コクサッキーウイルスA群 16型およびその変異型,エンテロウイルス71型により起こります.他の季節に流行することもあります.手,足,尻,膝に小水疱または発疹,口の中に粘膜疹ができます.通常熱はないか微熱程度ですが,高熱を伴うこともあります.手足口病の原因ウイルスは数種類あるので,何度でもかかることがあります.直接治療する薬はないので,自然治癒を待ちます.2011年夏,西日本で流行した手足口病はコクサッキーウイルスA群6型によるもので,発疹や水疱が大きく,ボコンボコンと皮膚が盛り上がり,痒みが激しく,高熱を伴う場合もあり,従来の手足口病よりも症状が強かったです.その後,このタイプの手足口病が数回流行しました.今夏,当院では既に手足口病の患者発生を確認していますが,手足にパラっと小さな発疹が出る程度で,口の中の粘膜疹をほとんど伴いません.熱が出る場合もありますが,軽症で治癒に至っています.今後の流行にご注意ください.

2.ヘルパンギナ
乳幼児で流行する夏かぜの一種です.コクサッキーウイルスA群1-10,16,22型,B群1-5型,エコーウイルス6,9,11,16,17,22,25型により起こります.他の季節に流行することもあります.38-40℃の高熱が2-3日間続きます.のどの奥に小さな水ぶくれができて痛いので,食べられなくなります.酸っぱいものや塩辛いものはのどにしみるので,避けた方がいいでしょう.ひどいときは水も飲めなくなり,脱水症になることがあります.ヘルパンギナの原因ウイルスは複数あるので,何度でもかかることがあります.直接治療する薬はないので,自然治癒を待ちます.今夏,当院では既に手足口病の患者発生を確認していますが,1-2日間の発熱で済み,のどの所見も軽いものがほとんどです.今後の流行にご注意ください.

3.無菌性髄膜炎
「夏かぜ」を起こすエンテロウイルスのうち,エコーウイルス1-7,9,11-23,25,30,31型,コクサッキーウイルスA群7, 9-16型,B群1-6型が,無菌性髄膜炎の原因ウイルスとして知られています.その年によって流行するウイルスが異なります.ウイルスは多数あるので,無菌性髄膜炎に複数回かかることがあります.主な症状は,発熱,頭痛,嘔吐です.首の後ろの部分(項=うなじ)が硬くなり首を曲げることができなくなります(=項部硬直).無菌性髄膜炎を起こしているかどうかは,病院で髄液検査をしないと正確には診断できません.通常1-2週間程度の入院が必要になります.最近10数年は,大流行を起こしていません.夏の終わりから秋の始めに流行するので,注意が必要です.

4.咽頭結膜熱
アデノウイルス3,4,6,8型などによって起こる感染症です.39-40℃の高熱が4-5日続き,喉の痛みが強く,結膜炎を起こして眼がまっ赤になります.頭痛,はき気,腹痛,下痢を伴うこともあります.夏期に流行するため,かつては「プール熱」と俗称されていました.現在のプールの塩素濃度で感染することは,通常ありません.直接治療する薬はないので,自然治癒を待ちます.当院周辺では,数カ月前より断続的に小流行が起きています.発熱を伴わない軽症例がほとんどですが,感染力が強いので注意が必要です.

5.伝染性膿痂疹(とびひ)
原因菌は,約90%が黄色ブドウ球菌,約10%が連鎖球菌です.一般的には,黄色ブドウ球菌の場合には皮膚が水ぶくれになり「水疱性膿痂疹」に,連鎖球菌の場合にはかさぶたになり「痂皮性膿痂疹」になります.顔,特に鼻の穴付近や手足などの露出部,外傷などから始まることが多く,他の部位に次々に飛び火するように広がって行きます.治療は抗菌薬の内服,外用です.近年,抗菌薬が効きづらい黄色ブドウ球菌(MRSA)が蔓延しています.MRSAが原因菌の場合には,通常の治療に反応せず治癒までの期間が長引きます.当院周辺では7月初旬から患者数が増加しています.気温や湿度の上昇とともにさらに患者数が増える可能性があります.ご注意ください.