2017/18シーズンは世界的にインフルエンザの流行規模が大きく,日本においても近年では最も大きな流行で,2016/17シーズンの1.5倍の患者数が報告されました.流行したインフルエンザウイルスの亜型の比率は,A/H1pdm09が36%,A/H3(香港型)が21%,B/山形系統が38%,B/ビクトリア系統が2%でした.

2017/18シーズンの日本国内のインフルエンザワクチンには以下の4株が使用されていました.
A/シンガポール/GP1908/2015(IVR-180)(H1N1)pdm09
A/香港/4801/2014(X-263)(CEXP002)(H3N2)
B/プーケット/3073/2013 (山形系統)
B/テキサス/2/2013(ビクトリア系統)

2017/18シーズンのインフルエンザワクチンについては,当初選定されたA/埼玉/103/2014(CEXP002)(H3N2)の増殖が不良で,実際の蛋白収量が前シーズンの製造株であるA/香港/4801/2014(X-263)と比較して約33%と大幅に低下し,最大限の生産を行ってもインフルエンザワクチンの総生産量が前シーズンの約71%にとどまることが明らかになりました.このため,2017年7月12日,厚生労働省は前シーズンのワクチン株であるA/香港/4801/2014(X-263)を使用する旨通知しました.直前のワクチン株の変更により,例年に比べワクチンの納入が遅れ,一時的にワクチンが不足するという事態がおきました.

2018/19シーズンの日本国内のインフルエンザワクチンには以下の4株が使用されます.
A/シンガポール/GP1908/2015(IVR-180)(H1N1)pdm09
A/シンガポール/INFIMH-16-0019/2016(IVR-186)(H3N2)
B/プーケット/3073/2013 (山形系統)
B/メリーランド/15/2016(NYMC BX-69A)(ビクトリア系統)

2017/18シーズンのワクチンと比べ,A/H1pdm09とB/山形系統に変更はありません.これら2つのウイルスについては国内で採取された株に遺伝的および抗原的性状にほとんど変化が認められず,2018/19シーズンにおいても有効と判断され,同じ株が使用されることになりました.一方,A/H3(香港型)とB/ビクトリア系統は変更になりました.2017/18シーズンのA/H3(香港型)の流行株の87-91%は,A/香港/4801/2014(X-263)(CEXP002)およびA/シンガポール/INFIMH-16-0019/2016(IVR-186)と抗原性が類似していました.しかし,A/香港/4801/2014(X-263)(CEXP002)は鶏卵における継代培養の過程での抗原変異が大きいため有効性が低下すると判断され,A/シンガポール/INFIMH-16-0019/2016(IVR-186)が選択されました.2018年2月頃から国内で分離されているB/ビクトリア系統の株は,B/テキサス/2/2013と抗原性が大きく異なっていました.このため,分離株と抗原性が近いB/コロラド/06/2017とB/メリーランド/15/2016(NYMC BX-69A)がワクチン株として当初推奨されましたが,最終的に製造効率を重視した結果B/メリーランド/15/2016(NYMC BX-69A)が選択されました.

2017/18シーズンのインフルエンザワクチンの製造量は2643万本,使用量は2491万本でした.2018年3月の時点での2018/19シーズンの供給予想本数は2779万本です.

当院では,例年,9月中旬よりインフルエンザワクチンの予約受付を,10月初旬より接種を開始しています.薬品卸会社からワクチン納入日,納入本数が知らされてから予約受付を開始します.ワクチンの製造不良,流通の遅滞,買い占めなどにより,ワクチンが突然入手できない事態が生じることがあります.実際,過去に何度も起きています.前述した通り,昨シーズンも直前のワクチン株の変更により,納入の遅れが生じています.このように当院の責任を超えた事態が生じた場合には,予約をお受けしても接種ができなくなることがあります.ご承知おきください.

インフルエンザは高熱が続き,関節炎,肺炎,中耳炎など多くの合併症を引き起こします.ときに,脳炎脳症が起こり,死亡することがある病気です.10-11月にはインフルエンザワクチンの接種を必ず受けてください.早目の接種をお勧めします.