2018年8月1日に,「日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール」が改訂されました.前回の改訂は2016年10月1日でしたので,約2年ぶりの改訂です.予防接種には,定期接種のほかに任意接種があります.定期接種は公費負担で行われています.一方,任意接種は原則自費ですが,市町村によっては補助をしているところもあります.

前回の改訂から引き続き接種が推奨されている任意接種ワクチンは以下の通りです.

(1)ロタウイルスワクチン:ロタウイルス胃腸炎は激しい嘔吐や下痢により高度の脱水になり,死亡することがあります.脳炎や脳症を合併することもあります.2種類の経口ワクチンがあります.ロタリックス(1価ワクチン)は生後6週から24週の間に,4週間の間隔をあけて2回接種します(1回目は生後15週未満を推奨,吐いた場合には飲み直しが可能).ロタテック(5価ワクチン)は生後6週から32週の間に,4週間の間隔をあけて3回接種します(1回目は生後15週未満を推奨,吐いた場合には飲み直しが不可).

(2)おたふくかぜワクチン:おたふくかぜは,3-10%に無菌性髄膜炎を,400-1000分の1に難治性の難聴を合併します.予防効果を確実にするため,2回接種が必要です
.1回目は生後12−15カ月の間に,2回目は5歳以上-7歳未満で接種します.
(3)インフルエンザワクチン:インフルエンザは脳炎・脳症,肺炎,中耳炎,関節炎など合併症の非常に多い病気で,死亡することもあります.インフルエンザワクチンの接種を受けても感染を100%免れるわけではありませんが,重症化を防ぐことができます.A/H1pdm09,A/H3(香港型),B/山形系統,B/ビクトリア系統の4株が含まれています.毎年10-11月に接種します.6カ月以上13歳未満は2回接種,13歳以上は1回接種です.

今回の改訂で新たに接種が推奨された任意接種ワクチンは以下の通りです.

(4)3種混合(ジフテリア・百日咳・破傷風)ワクチン:通常,乳幼児期に4種混合(ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ)ワクチンの接種を4回受けています.日本では百日咳ワクチンは4回接種ですが,欧米諸国などでは5-6回接種です.日本では接種回数不足のために抗体価が減衰し,百日咳患者の流行が抑制されていません.就学前児の百日咳抗体価が低下していることを受けて,3種混合ワクチンを5歳以上7歳未満に接種します.また,百日咳の予防を目的に,11-12歳で2種混合ワクチンの代わりに3種混合ワクチンを接種します.

(5)ポリオワクチン:乳幼児期に4種混合(ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ)を4回接種します.ポリオに対する抗体価が減衰する前にポリオワクチンを5歳以上7歳未満で接種します.
*5歳以上7歳未満で4種混合(ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ)ワクチンを接種することも可能です.

B型肝炎ワクチンは現在定期接種ですが,平成28年3月末日までに生まれた人は対象外です.B型肝炎ウイルス(HBV)の感染経路は,注射器の共用,滅菌処理をしていない器具での刺青やボディピアスの装着,針の誤刺,性交渉,傷口への接触,出産や授乳時の母子感染などです.感染すると約30%が急性肝炎として発病します.急性肝炎発症者の約2%は劇症肝炎になり,劇症肝炎発症者の約70%が死亡します.HBVはヒトの肝臓に慢性持続性感染を起こします.現在日本にはHBV保有者(キャリア)が約150万人いると言われています.キャリアのうち10-15%が慢性肝炎を発症し,肝硬変,肝細胞癌に進行する場合があります.父子間の水平感染も重要です.父がキャリアの場合には,約10%の子が感染者になるという報告があります.HBウイルスキャリアの尿の73%,唾液の92%,涙の100%,汗の100%にウイルス排泄が証明されています.日本でも保育園や柔道部などでの集団感染が報告されています.1992年,世界保健機構(WHO)は全世界の全出生児に対してB型肝炎ワクチンを接種すべきであると勧告しました. B型肝炎ワクチンは,性行為,父子間などの家族内,保育園児間などの水平感染も防止してくれます.B型肝炎ワクチンは3回接種です.1回目から27日以上,139日以上の間隔をおいて,2回目,3回目の接種を受けます.

日本は,「ワクチン後進国」です.日本で任意接種扱いのワクチンのほとんどは,欧米先進国や中進国などでは定期接種に組み込まれています.任意接種のワクチンも接種を受けてください.平成28年3月末日までに生まれた人は,B型肝炎ワクチンの接種も受けてください.我が身,我が子は自分で守るしかありません.