2018年8月31日,新潟県福祉保健部健康対策課および生活衛生課が,新潟県内で8月24日から30日までの1週間で20人の腸管出血性大腸菌O157感染症患者が報告されたと発表しました.内訳は,男女別には男性が3人,女性17人,年齢別には10歳未満(乳幼児)が3人,10際未満(学童)が3人,10歳代が7人,30歳代が2人,40歳代が3人,60歳代が1人,70歳代が1人,地域別には新潟が2人,新発田が1人,三条が5人,長岡が7人,柏崎が5人でした.小児例の約半数が溶血性尿毒症症候群を併発し,なかには人工透析を行なっている症例もあるようです.現在,原因食品や感染経路などを調査中ですが不明です.地域的なバラツキがあることから,特定の飲食店や食品スーパーなどが原因である可能性は低いです.ただし,調理や流通過程が同一の食肉や惣菜などが原因である可能性は否定できません.

腸管出血性大腸菌感染症は,ベロ毒素(Vero toxin:VT)を産生またはVT遺伝子を保有する病原性大腸菌により下痢,血便,腹痛,発熱を主症状とする疾患です.溶血性尿毒症症候群を併発した場合には,痙攣などの神経症状を起こし,腎不全に至り,死亡することがあります.

日本国内では,2017年に腸管出血性大腸菌感染症患者が2606例,患者発生時の積極的疫学調査や調理従事者等の定期検便などで発見される無症状病原体保有者が1298例,合計3904例が報告されました.例年同様,夏に多くの患者報告がありました.2017年に報告された腸管出血性大腸菌の菌数は1689で,血清型はO157が54%,O26が25%,O103が6.6%でした.腸管出血性大腸菌感染症は散発例に加え,飲食店,総菜店,焼肉店などにおける集団食中毒事例も毎年発生しています.

感染性腸炎には細菌性とウイルス性があり,一年を通じて発生します.夏季は主に細菌が原因となることが多いです.腸管出血性大腸菌のほかに,サルモネラ菌,腸炎ビブリオ,カンピロバクター,黄色ブドウ球菌,ボツリヌス菌,ウェルシュ菌などが原因となります.これらの細菌は10-45℃とくに30-37℃で増殖しやすくなります.このため,気温が上がる夏季には,食品の温度管理や取り扱い,台所の衛生状態に注意が必要です.

食品に菌が付着し,付着した菌が増え,その食品を食べて細菌性腸炎が起こります.菌が付着していても,菌数が増えていなければ発病しない場合もあります.予防の3原則は,菌を「つけない」「増やさない」「やっつける」です.

つけない:買い物をする際には,新鮮な食材を購入してください.肉や魚などは別々にし,他の食品に触れないようにしてください.肉汁や魚の水分が漏れないように注意してください.調理前だけでなく,調理の途中でもこまめに手を洗いましょう.タオルや布巾は清潔なものにすぐに交換しましょう.野菜などの生で食べる食材はよく洗い,生の肉や魚などの食材とは離しておきましょう.生肉や魚を扱った後はまな板や包丁などをすぐに洗浄し,手洗いをしっかり行うことが大切です.

増やさない:食材を菌が増殖しやすい温度に長時間置くことはやめましょう.買い物をしたらすぐに帰宅して,食材を冷蔵庫に入れましょう.暑い日には,保冷バッグや保冷剤を使用してもよいでしょう.冷蔵庫の温度管理も大切です.冷蔵庫に詰め過ぎると,冷却効果が落ちます.少し隙間ができるくらいを目安に食材を入れてください.

やっつける:肉や魚などは十分に加熱しましょう.電子レンジ,オーブン,フライパンを使用する場合には,食材を均一に加熱するようにしましょう.調理をしたら,早目に食べましょう.料理が残った場合には清潔な容器に移し,小分けにして冷やしましょう.温めなおす時には十分に加熱してください.時間が経っていて少しでも怪しいと思ったら,迷わずに捨てましょう.

当院では,2011年8月に,O157と026による腸管出血性大腸菌感染症患者が1例ずつ発生しました.2015年7月には,下痢,血便の患者からO157が検出され,腸管出血性大腸菌感染症患者であることが確認されました.いずれも溶血性尿毒症症候群は発症せず,治癒しました.家族内感染などの2次感染はありませんでした.感染経路は不明でした.

当院では,便培養を積極的に行い,腸管出血性大腸菌の発見に努めています.下痢が続き血便がある場合には,早目に受診してください.