アレルゲン免疫療法は1911年から開始され,100年以上の長い歴史があります.従来から行われている皮下免疫療法(SCIT)では,原因アレルゲンを皮下に注射により投与し,その量を次第に増やして行き,副作用が出ない程度の抗原量を維持します.やがて免疫寛容が誘導され,アレルギーを克服することができます.SCITはアレルギー性鼻炎や気管支喘息などに有効です.しかし,250万回に1回の割合で死亡を含む重篤な副作用が発生し,その59%は維持期に発生します.日本国内でも報告があります.

近年,新たな抗原投与方法として舌下免疫療法(SLIT)が開発され,SCITからより安全なSLITへ移行しつつあります.世界的には,室内塵ダニ,スギ花粉,イネ科雑草花粉,ブタクサ花粉などの製剤が開発されています.日本では,室内塵ダニの舌下錠とスギ花粉の液剤および舌下錠が承認され,アレルギー性鼻炎の治療薬として保険適応があります.「鼻アレルギー診療ガイドライン2016 」には,重症度にかかわらずダニ通年性アレルギー性鼻炎,スギ花粉症の治療薬として記載されています.

スギ花粉症にSLITを行うと,鼻汁,くしゃみ,鼻詰まり,涙目などの症状が軽減します.3年間SLITを継続すると7割の症例で症状が軽減します.SLITを開始して数カ月後に効果が現れることもあり,治療開始後初めてのスギ花粉飛散期に症状の軽減を実感できる場合もあります.

ダニ通年性アレルギー性鼻炎にSLITを3年間実施すると,その後7年間効果が持続します.再発した場合には,1年間SLITをすればその後効果が再現し数年間持続します.ダニ通年性アレルギー性鼻炎に対するSLITは,幼児から成人まで年齢に関わらず良く効きます.

SLITには当該アレルゲンによるアレルギー性鼻炎の症状を改善する以外に,様々な効果があります.

SLITを実施すると,他の吸入抗原の新規感作が抑制されることが知られています.

SLITには,気管支喘息の発症を予効する効果があります.海外では,牧草花粉アレルギーの患者にSLITを実施すると気管支喘息の発症を抑制することが明らかになっています.イネ科花粉のSLITでも同様の結果が得られています.ダニのSLITを実施することにより,気管支喘息の治療薬であるステロイド吸入薬の量を減らすことができます.ステロイド吸入薬は気管支喘息の症状を軽減しますが,長期予後を改善することはできません.ステロイド吸入薬などの対症療法薬には,その効果に限界があります.一方,SLITを行うことにより気管支喘息の予後改善が期待できます.

5歳時のアレルギー性鼻炎の存在は,13歳時の気管支喘息発症のリスク因子です.5歳時にSLITによりアレルギー性鼻炎を治療しておくことは,将来の気管支喘息の発症を抑制してくれます.

通年性アレルギー性鼻炎があると,気管支喘息を発症していなくても気道過敏性が亢進し,喀痰中の好酸球数が増加しています.上気道の鼻にアレルギー性炎症がある場合には,下気道の気管支や肺にも炎症が存在します.通年性アレルギー性鼻炎は,気管支喘息の難治化の要因である気道リモデリングのリスク因子です.SLITによりアレルギー性鼻炎を治療すると,鼻以外の気道の状態を改善します.SLITを行って気道粘膜の状態を改善しておくと,細菌やウイルスが体内へ侵入しづらくなり,呼吸器感染症にかかりにくくなります.

SLITには死亡例はなく,安全性に大きな問題はありません.SLITを含むアレルゲン免疫療法には,医療経済的メリットがあることが証明されています.

当院では,既に,ダニ通年性アレルギー性鼻炎の約300人の患者さんにミティキュアを,スギ花粉症の約150人の患者さんにシダキュアを処方しています.私自身も毎日ミティキュアとシダキュアを服用しています.ミティキュアを開始して約半年経過しましたが,鼻詰まりが軽快し,いびきをかかなくなりました.SLITの効果を実感しています.シダキュアの効果はスギ花粉飛散期にならないと判断できませんが,春の訪れが今から楽しみです.

ミティキュアは,いつでも開始が可能です.シダキュアはスギ花粉飛散期には開始はできません.今夏の猛暑を受け,来春は例年の2-4倍のスギ花粉が飛散するそうです.スギ花粉症の方は,早目にシダキュアを開始した方がいいでしょう.