ロタウイルス胃腸炎はウイルス性胃腸炎の1つで,乳幼児ではしばしば重症化します.例年寒さが緩む2-3月頃に流行します.ときに他の季節に流行します.主な感染経路は糞口感染です.ロタウイルスは感染力が極めて強いのが特徴です.主な症状は,発熱,嘔吐,下痢,腹痛です.一晩で高度の脱水に陥り,命にかかわることがあります.合併症として肝機能異常,痙攣,まれに脳炎・脳症があります.

世界全体での5歳未満のロタウイルス胃腸炎の死亡数は,2004年には52.7万人でした.その後世界各国でロタウイルス胃腸炎予防ワクチン(以下,ロタワクチン)が導入され,2013 年には死亡数は21.5万人に減少しました.

現在2種類のロタワクチンがあり,日本には2011年11月にロタリックスが,2012年7月にロタテックが導入されました.

ロタワクチンの高い有効性は,日本各地における調査で明らかになっています.千葉県南房総地区では2015年には0歳児のロタワクチンの接種率が約70%でした.ワクチン導入により,5歳未満のロタウイルス胃腸炎による入院が62%減少しました.北海道旭川市では2013年の接種率が約40%で,小児の入院が46%減少しました.名古屋市では早期からロタワクチンの公費助成が始まったため2015年までの接種率が84-92%で,1歳未満児の入院が72.2%減少しました.接種率が高いほど入院が減少するという結果が得られています.

新潟県新発田市では,ロタワクチンの接種率は2011年には32.9%でした.公費助成がないのにもかかわらず2017年には81.7%に上昇しました.ロタワクチンの普及により,ロタウイルス胃腸炎による外来受診,点滴が同市内の4小児科診療所で減少し,県立新発田病院における入院が減少しました.2011年から2017年までの8年間の観察では,ロタワクチンの接種率が70%以上になると外来受診と入院が明らかに減少し,80%以上になると重症例がゼロになっていました.

近年,インフルエンザワクチンの有効性を検討する手法としてtest-negative case control design(症例対照研究)という解析方法が用いられています.この手法を用いて福岡県および佐賀県でロタワクチンの効果を検討したところ,発症に対しては80.2%,外来点滴や入院に対しては97.3%の有効率を示しました.

ロタワクチンの安全性については,国内9地域で共同調査が行われました.2011年のロタワクチン導入後,腸重積の発症数は横ばいもしくはやや減少していました.1歳未満に限った検討でも,特に変化はありませんでした.ただし,生後3カ月だけは発症率がわずかに上昇していました.ロタワクチンを導入した諸外国および日本では,ロタワクチンの初回接種後1-7日目には腸重積の相対発症リスクがやや高くなる傾向を示しました.ロタワクチン初回接種後6-7日目に便中ロタウイルス量が最大になり,この時期に一致して腸重積の発症が増加していました.ただし,腸重積の入院例はありますが死亡例はなく,ロタワクチンの効果を考えると総じてその安全性に問題はないと考えられました.

ロタウイルスには多くの遺伝子型があり,日本では主にG1,G2,G3,G4,G9が流行しています.流行する遺伝子型は毎年変化しています.新発田市における解析でも,流行する遺伝子型は1-2年で変化していました.オーストラリアではかつて州によってロタリックスまたはロタテックのいずれかが採用されていました.流行したロタウイルスの遺伝子型はロタリックスを採用した州とロタテックを採用した州では異なっていましたが,ロタワクチンの種類に関わらず遺伝子型には多様な変化が認められました.

2016年5月の時点で,ロタワクチンは世界81カ国で定期接種化されています.英国では2013年に定期接種化され,その後ロタウイルス胃腸炎の流行がなくなりました.日本でのロタワクチンの推定接種率は2012年で30.0%でしたが,2017年には72.1%まで上昇しています.任意接種にも関わらず比較的高い接種率ですが流行を完全に抑制するには不十分で,2-3月にはロタウイルス胃腸炎の流行が観察されています.

ロタワクチンは現時点では任意接種ですが,是非受けてください.当院では90%以上の乳児が接種を受けています.高価ですが,効果は非常に高いです.ロタワクチン接種に対して公費助成を実施している市町村が全国的には増加しています.早期の定期接種化が望まれます.