生まれた時,既にヒトの身体には男女に違いがあります.男児であれば外性器は陰茎,内性器は精巣,女児であれば外性器は膣,内性器は卵巣と子宮です.これを「1次性徴」と呼びます.乳幼児期が終わり,学童期の途中から「2次性徴」が始まります.2次性徴を経て成熟した男,女になり,子孫を残す力=生殖能を獲得します.2次性徴する時期が,思春期です.

日本人では,男児は12歳頃,女児は10歳頃に思春期が始まります.思春期の発来には一定の順序があります.まず初めに,男児では精巣容積が増大し,女児では乳房が腫大します.その後,男女児ともに恥毛が発育し,やがて男児では声変わりが,女児では初潮が起こります.思春期は概ね2-3年間で完成します.身長がぐんと伸びるのも思春期の特徴です.思春期が終わると,骨格が完成し,最終身長に達します.

思春期早発症というのは,通常よりも2-3年早く思春期が来てしまう病気です.思春期早発症の主な症状は,男児では9歳までに精巣が発育する,10歳までに陰毛が生える,11歳までにわき毛やひげが生える,声変わりが見られる,女児では7歳6カ月までに乳房がふくらみ始める,8歳までに陰毛やわき毛が生える,10歳6カ月までに月経が始まる,などです.

思春期早発症では,一時的に身長が伸びますが,最終身長は低くなってしまいます.また,陰毛やわき毛,乳房の腫大や月経など実際の年齢とは不釣合いな体の変化が起こるため,心理的な問題が生じます.

思春期早発症の男女比は1:8で,患者の多くは女児です.脳の一部である視床下部や下垂体から精巣や卵巣に命令が送られて思春期は始まりますが,これが通常より早く起きてしまうものを中枢性思春期早発症と呼びます.思春期早発症の多くはこのタイプです.これらのうち,MRIなどで脳内に病変が見つからないものを特発性中枢性思春期早発症と呼びます.体質的なもので,女児の70-80%,男児の40%はこのタイプです.男児では視床下部や下垂体の付近に腫瘍性病変が見つかることがあり,注意が必要です.この他に,特殊なタイプとして,男児では精巣に命令をするhCGというホルモンを産生する腫瘍,女児では卵巣が脳からの指令がなくても活動してしまう自律性機能性卵巣嚢腫による思春期早発症があります.

前述した思春期早発症の主な症状が2つ以上,あるいは1つでも年齢不相応な身長の伸びや骨成熟がある場合には,性ホルモンなどの血液検査や画像検査を行います.思春期が始まると,視床下部からゴナドトロピン放出ホルモン(GnHR)が盛んに分泌されます.GnHRの刺激により,下垂体から黄体化ホルモン(LH)や卵胞刺激ホルモン(FSH)が放出されます.LHやFSHの刺激により,男児では精巣からテストステロンという男性ホルモンが,女児では卵巣からエストロゲンという女性ホルモンがたくさん分泌されるようになります.中枢性思春期早発症では,これらのホルモンの血中濃度が上昇します.思春期の徴候があるのにLHやFSHの上昇がない場合には,hCG産生腫瘍や自律性機能性卵巣嚢腫の存在が疑われます.

腫瘍が原因である場合や特殊なタイプの思春期早発症では,その治療を優先します.最も多いタイプの特発性中枢性思春期早発症では,LH-RHアナログという薬剤を使用します.通常は4週間に1回,医療機関で注射します.LH-RHアナログの投与により,下垂体からのLH,FSHの分泌が抑制され,精巣からのテストステロン,卵巣からのエストロゲンの分泌が減少します.その結果,思春期の進行や徴候が抑制され,骨の成長も緩徐になり最終身長の改善が期待できます.

前述した思春期早発症の主な症状がある場合や同級生と比べて思春期の発来が明らかに早過ぎると感じる場合には,注意が必要です.当院にご相談ください.諸検査を行い,必要な場合には専門施設へ紹介します.