例年,冬には以下のような病気が流行します.年によって流行時期がずれることがあります.

11月下旬から12月には,ノロウイルスによる急性胃腸炎が流行します.激しい嘔吐や下痢が主症状です.感染力が極めて強く,ある日突然保育所や学校で爆発的に流行します.子どもだけでなく成人も感染することがあり,一家全員が罹患することもあります.年長児では半日程度の激しい嘔吐だけのことが多いですが,乳幼児では嘔吐に引き続き下痢や白色便が出現します.軽症の場合には,吐き気だけが数日続きます.症状が消失しても少なくとも1週間程度は糞便中にウイルスが排泄されることから,便の始末や手洗いには十分な注意が必要です.今年は11月下旬に患者発生が確認されています.当院では,既に数人のお子さんが脱水のために外来点滴を受けています.

11月下旬から12月には,RSウイルス感染症が流行します.RSウイルスは風邪ウイルスのひとつです.成人や年長児では,いわゆる「咳風邪」で症状は終息します.乳幼児では,7割は「咳風邪」で済みますが,3割は細気管支炎,肺炎,急性中耳炎などを併発します.乳児で細気管支炎が起きると呼吸困難に陥り,入院が必要になります.RSウイルスによる喘鳴は,気管支喘息の治療薬であるロイコトリエン受容体拮抗薬が効きづらく,治療に難渋します.肺炎を起こすことがあり,X線撮影が必要になる場合があります.しばしば急性中耳炎を合併するため,鼓膜の観察は必須です.当院周辺では,今年は9月から流行が始まり,現在も患者発生が続いています.

12月中旬になると,インフルエンザの患者発生が見られます.通常,12月中に大きな流行に至ることはありません.年が明けて,学校や保育所が始まってしばらくした1月中旬頃から本格的な流行が始まります.1月末から2月初旬に流行のピークを迎え,学級閉鎖などのニュースが報道されるようになります.流行は2月中旬から下旬には終息することが多いですが,3月に流行がずれ込むこともあります.A型インフルエンザがB型インフルエンザに先行して流行することが多いですが,両型が同時流行することもあります.流行株や流行規模はシーズンにより異なりますが,予測することは不可能です.インフルエンザでは,高熱が続き,関節痛,倦怠感などを伴います.肺炎や中耳炎はしばしば起こります.小児にとって最も恐ろしいのは,急性脳症・脳炎です.発熱が起きてから24-48時間以内に痙攣,意識障害などが起きます.転帰は不良で,死亡するか,命が助かっても多くは後遺症を残します.インフルエンザウイルスは変異が激しく,毎シーズン前にワクチンの接種が必要です.

2月下旬から3月には,ロタウイルスによる急性胃腸炎が流行します.ロタウイルスに感染すると,激しい嘔吐,白色便,頻回の下痢が起こります.脱水が高度になり,まれに死亡することがあります.他のウイルス性胃腸炎に比べ重症なことが多く,1-2回の点滴では症状は改善しません.点滴が必要な場合には,早目に入院をした方がよいです.流行が開始するとすぐに病院が満床になり,入院先が見つからない事態が発生する場合があります.ロタウイルス胃腸炎予防ワクチン(ロタワクチン)があり,非常に効果が高いです.ワクチン接種により入院を90%以上の確率で回避できます.日本におけるロタワクチンの推定接種率は約70%です.新潟県内では約80%,当院では90%以上の乳児がロタワクチンの接種を受けています.必ず接種を受けてください.

小児がノロウイルス胃腸炎,RSウイルス感染症,インフルエンザ,ロタウイルス胃腸炎などに罹患すると重症化し,乳幼児では生命にかかわることがあります.これから冬本番です.十分な注意が必要です.