2019年12月,当院周辺では,各種のウイルス性胃腸炎が混合流行しています.小児で流行する主なウイルス性胃腸炎は以下の通りです.

ロタウイルス胃腸炎は,例年寒さが緩む2-3月頃に流行します.ときに他の季節に流行します.主な感染経路は糞口感染で,潜伏期間は2-3日です.患者の便1g中に10の11乗個の大量のロタウイルスが存在しますが,1-10個のロタウイルスで感染が成立してしまいます.ロタウイルスは感染力が極めて強いのが特徴です.主な症状は,発熱,嘔吐,下痢,腹痛です.病初期に発熱と嘔吐が出現します.発熱は40-60%にみられ,通常は2日間で解熱します.嘔吐は60-90%の症例に出現し,通常2日目以後は減少し,その後下痢が始まります.下痢の性状は水様便が多く,約半数の患児に,豆腐をつぶした,あるいは紙粘土のような白色便,クリーム色便が認められます.下痢は1日数回から十数回に及び,7-14日間続きます.一晩で高度の脱水に陥り,命にかかわることがあります.合併症として肝機能異常,痙攣,まれに脳炎・脳症があります.ロタワクチン(商品名:ロタテック,ロタリックス)が日本に導入されて,6-7年が経過しました.ロタワクチンは乳児期早期に経口接種します.当院では任意接種にもかかわらず,9割前後の乳児が接種を受けています.ロタワクチンの効果は絶大で,ここ数年はロタウイルス胃腸炎の大きな流行はありませんでした.しかし,2108年5月に当院周辺で, 6-8歳児でロタウイルス胃腸炎が流行しました.ロタワクチンを受ける機会のなかった世代に感受性者が蓄積されていたためと考えられます.ロタウイルス胃腸炎は,直ぐに治りません.中等症以上では外来点滴で対応できず,入院が必要になります.ロタワクチンは必ず接種を受けてください.

ノロウイルス胃腸炎の流行のピークは12月ですが,他の季節にも患者発生があります.乳児から高齢者まで全ての年齢層が罹患します.潜伏期間は0.5-3日で,多くは1-2日です.主症状は,悪心,嘔吐,下痢,腹痛,発熱,倦怠感です.ほとんどの場合,数日で自然治癒します.しかし,その後症状が消失しても約1週間,最大で1カ月間はウイルスの排出が続きます.乳幼児や高齢者では,嘔吐や下痢が激しく脱水状態に陥ることがあります.ノロウイルス胃腸炎患者の下痢便1g中に106-9個,吐物1g中に104-8個のウイルスが含まれています.ノロウイルスは10-100個のウイルスで感染が成立するため,感染力が強いのが特徴です.不顕性感染者であっても,便中にウイルスを排出します.ノロウイルスは食中毒の原因にもなります.ノロウイルスに汚染されたカキなどの2枚貝の喫食によるものが最も有名ですが,現在は調理者の手指を介した食品汚染が最多です.2014年1月の浜松市における集団食中毒では学校給食のパンが原因食品で,食パン製造所従事者23名中4名からノロウイルスが検出されました.ノロウイルス胃腸炎が軽症の場合には,吐き気止めの座薬や経口補水療法により軽快します.中等症の場合には,外来点滴で回復します.しかし,脱水が激しく電解質バランスが崩れ低血糖に陥るような重症の場合には入院が必要になります.当院では,12月1日に患者発生が確認されました.今後,流行が拡大する可能性があります.十分ご注意ください.

アデノウイルス胃腸炎には好発季節がなく,通年性に発生します.感染経路は糞口感染で,潜伏期間は7日間,ウイルスの排泄は10-14日間続きます.3歳未満の乳幼児に多く,アデノウイルスは特に0歳児からよく検出されます.発熱の頻度は30%程度で,嘔吐は約半数に認められますが回数は少なく,2日間程度で消失します.下痢はほぼ全例にみられます.激しい下痢ではありませんが,長引く傾向にあります.平均の下痢日数は7日間ですが,10-14日間持続する場合もあります.下痢は白色便またはクリーム色便を呈することがあります.ロタウイルスやノロウイルスによる胃腸炎よりも,比較的軽症で経過します.当院では,11月から散発的に患者発生が続いています.ご注意ください.

ロタウイルス,ノロウイルス,アデノウイルスには迅速診断キットがあり,外来で診断が可能です.ただし,ウイルス量が少ない場合には陽性を示さないことがあります.陽性であれば診断を確定できますが,陰性でも感染を100%否定することはできません.また,アストロウイルス,サポウイルス,コクサッキーウイルスなど他の急性胃腸炎を起こすウイルスには迅速診断キットはありません.日常診療で,ウイルス性胃腸炎の原因を全て明らかにすることはできません.

現在,当院周辺ではロタウイルス,ノロウイルス,アデノウイルスの迅速診断キットで陽性を示さない胃腸炎も流行しています.