一般的に,アトピー性皮膚炎は冬季に悪化することが知られています.中等症〜重症のアトピー性皮膚炎であっても,鼻の頭に湿疹が生じることはまずありません.鼻の頭は皮脂の分泌が盛んなために,自然に保湿されるからです.暑い夏は汗や汚れで皮膚症状が悪化することがありますが,清潔を心掛けていれば皮脂の分泌が盛んなために全身皮膚は保湿される傾向にあります.冬季は皮脂の分泌が減って皮膚が乾燥し,皮膚バリア機能が破綻しやすくなります.新潟県の冬は湿度が高いために,空気が乾燥しやすい太平洋側ほど皮膚症状の悪化傾向は顕著ではありません.しかし,住環境が良くなり冬も暖かく過ごせるようになったために,皮膚症状が悪化する場合があります.

アトピー性皮膚炎で湿疹がある場合には,まずステロイド外用薬を塗布します.皮膚に赤味がある,触ってザラザラする場合には湿疹です.このような部位には適切なランクと量のステロイド外用薬を塗ります.スタロイド外用薬はその強さにより,5つの群に分類されます.乳幼児アトピー性皮膚炎では,多くの場合は弱い方から2番目のIV群(mild)で皮膚症状は改善します.IV群で改善が見られない場合には,1ランク強いIII群(strong)を用います.塗布量は,finger-tip unit(FTU)を目安にします.1FTUは直径5mmのチューブから押し出される,成人の人差し指の指腹側末梢部(最先端から1番目の関節まで,約25-28mm)に乗る軟膏量で,概ね0.5gに相当します.1FTU(0.5g)が両手掌(両手のひら=体表面積の2%)の面積相当の皮膚に塗る量です.ローション製剤では,1円玉の大きさが1FTUに相当します.適量を塗った後の皮膚表面は,テカテカと光ります.テカテカしない場合には,塗布量不足です.ステロイド外用薬を皮膚に強くすり込んではいけません.上に載っているだけの方が,よく効きます.利き腕の2-3本の指腹部でやわらかく伸ばしてください.見掛け上湿疹がなくなっても,皮膚炎は完全には終息しません.湿疹がなくなっても,さらに2-3日間はステロイド外用薬の塗布が必要です.湿疹病変だけでなく,その周囲2-3cm程度には皮膚炎が少なからず存在します.やや広めにステロイド外用薬を塗布してください.

ステロイド外用薬の塗布方法は,軽症では従来から行われているreactive療法を行います.すなわち,湿疹が出現したらステロイド外用薬を塗ります.中等症から重症では,proactive療法を行います.ステロイド外用薬を連日塗布して皮膚がきれいになったら,湿疹が再燃しないように月,水,金曜日にステロイド外用薬を塗布します.2-3週間経過が順調であれば月,金曜日に回数を減らし,さらに月曜日だけにします.最終的には保湿剤だけで皮膚症状がコントロールできることを目指します.Reactive療法とproactive療法では,ステロイド外用薬の使用量に大きな差がありません.しかし,proactive療法はreactive療法よりも副作用が少なく,アトピー性皮膚炎の病勢の指標である血中TARCの下がりが良く,かゆみなどの皮膚症状の改善が良好です.TARCが高値のうちにステロイド外用薬を止めると,皮膚炎が再燃してしまいます.TARCを参考にしながら,治療を緩めて行きます.

2歳以上では,プロトピック軟膏を使用します.ステロイド外用薬の経皮吸収が良過ぎる顔面や頸部とくに眼瞼,眼の周囲には,プロトピック軟膏は極めて有用です.プロトピック軟膏は使用直後に皮膚に灼熱感が生じることがあり,荒れた皮膚では特に出現しやすくなります.治療開始時にはステロイド外用薬で皮膚の炎症を十分に抑制し,その後にプロトピック軟膏に切り替えて行きます.具体的には,ステロイド外用薬を1日2回,1-2週間,連日塗布します.次に,朝はステロイド外用薬,夜はプロトピック軟膏を,1-2週間,連日塗布します.次に,プロトピック軟膏を1日2回,1-2週間,連日塗布します.プロトピック軟膏は連日塗布を継続しても構わない外用薬ですが,月,金曜日に塗布をするproactive療法を行えば多くの場合皮膚症状をコントロールできます.

リンデロンVGやネオメドロールEE軟膏には抗菌薬が含まれているので,化膿性病変がない場合には使用してはいけません.不要な抗菌薬塗布は,接触皮膚炎を起こしてしまいます.眼周囲へのステロイド外用薬の塗布を1カ月以上続けると緑内障を起こすことがあるので,注意が必要です.

痒みが強い場合には,抗ヒスタミン薬の内服を併用します.抗ヒスタミン薬は,軽度鎮静性または非鎮静性のものを使用します.鎮静性抗ヒスタミン薬は脳内移行が激しく,眠気,痙攣誘発などの副作用があるため使用してはいけません.

アトピー性皮膚炎における皮膚症状の寛解維持というのは,「見ても触れても湿疹がゼロの状態」です.この状態を続けないとアトピー性皮膚炎は治癒には至りません.

当院では,血中TARCを指標にアトピー性皮膚炎を積極的に治療しています.ご心配な方は是非ご相談ください.