インフルエンザの主な症状は,5-7日間の高熱,寒気,全身がだるい,食欲がない.頭痛,手足の筋肉痛,腰の痛み.腹痛,吐く,下痢,のどの痛み,鼻みず,咳です.典型的な熱型は2峰性です.3-4日高熱が続いて(1つ目のヤマ),一旦下がり,その後再び発熱して(2つ目のヤマ),やっと熱が治まります.その後,頑固な咳が1週間残ります.普通の風邪よりも症状が強いのが特徴です.

インフルエンザの診断には,迅速診断キットを用います.微熱あるいは高熱でも発熱直後にはウイルス量が少ないため,陽性を示しません.このような場合には,翌日の再検査が必要です.高熱が生じて一晩経過すると陽性を示すことが多いので,受診のタイミングが大切です.インフルエンザ迅速診断キットの使用は,保険診療上,「1エピソードについて発熱後48時間以内に2回まで」「同日の再検査は不可」「最終検査から1週間以内の再検査は不可」となっていて,その使用には制約があります.ご注意ください.

インフルエンザでは,熱せん妄(うわ言,夢中歩行,飛び出し.飛び降りなどの異常行動)が起こることが以前より知られています.インフルエンザと診断された場合,特に発熱後48時間は患児の様子をよく観察してください.具体的な対策としては,全ての部屋の窓と玄関を確実に施錠する,ベランダに面していない部屋で寝かせる,格子付き窓のある部屋で寝かせる,一戸建ての場合にはできる限り1階で寝かせる,などです.なお,2007年より継続されていた10歳代のインフルエンザ患者に対するタミフルの使用制限は,2018年8月に解除になりました.

インフルエンザの発熱に対する解熱剤は,第1選択がアセトアミノフェン(アンヒバ坐薬,カロナールなど),第2選択がイブプロフェン(ブルフェンなど)です.アスピリン,サリチル酸を含む製剤,ジクロフェナク(ボルタレンなど),メフェナム酸(ポンタールなど)などは,インフルエンザ脳症を引き起こす可能性があるので使用してはいけません.

インフルエンザの合併症の中で最も恐ろしいのは,インフルエンザ脳症です.インフルエンザ脳症はインフルエンザ経過中に急性発症する意識障害を主徴とする症候群で,発熱後1日以内にほとんどが発症します.幼児期に好発し,発症年齢は1歳が最多です.痙攣,意識障害,精神症状などの神経症状が主ですが,呼吸器障害,凝固異常,多臓器不全を合併することがあります.病型として,急性壊死性脳症,ライ症候群,出血性ショック脳症症候群などに分類されます.予後は不良で,2000年頃は死亡率が30%,後遺症出現率が25%でした.2005年に厚生労働省研究班により「インフルエンザ脳症ガイドライン」が発表されその後普及したことにより,近年は死亡率が10%,後遺症出現率が25%になっています.インフルエンザ脳症は全身のサイトカインストームすなわち免疫系の過剰反応によって起こると考えられています.私が今まで経験した症例で最も急激な経過で死亡したのはインフルエンザ脳症のなかの「出血性ショック脳症症候群」でした.20数年前のある冬の日,私は新潟大学医学部附属病院小児科病棟の当直をしていました.近隣の病院から救急車で運び込まれた幼児の全身状態は極めて不良で,心肺停止の状態でした.蘇生を試みましたが,気管チューブから血が吹き出て,腹部は紫色に膨れていました.肺出血と腹腔内出血でした.前日昼頃の発熱から死亡までの全経過は10数時間で,死亡しました.当院は開設して21年になりますが,この間に3例のインフルエンザ脳症が発生しています.1例は死亡,2例は後遺症という転帰でした.インフルエンザ脳症は,決して珍しい疾患ではありません.交通事故と同様に,誰にでも起き得ます.

2018年3月に新規のインフルエンザ治療薬として,ゾフルーザが発売されました.ゾフルーザは,インフルエンザウイルスの複製・増殖を直接阻害します.従来から用いられて来たノイラミニダーゼ阻害薬(タミフル,リレンザ,イナビル,ラピアクタ)とは異なった機序で効果を発揮します.ゾフルーザとノイラミニダーゼ阻害薬の症状消失効果は同等ですが,ゾフルーザの方が投与後のウイルス消失時間が短く2次感染防止には優れていると考えられます.ただし,現状では,学校保健安全法により,「発症した後5日を経過し,かつ,解熱した後2日(幼児では3日)を経過するまで」は出席停止となっています.ゾフルーザを服用したから登校許可証が早くもらえるというわけではありません.

当院周辺では,12月下旬よりA型インフルエンザが流行しています.うがいや手洗いを励行し,体調維持の十分注意しましょう.