2018年12月より,当院周辺では伝染性紅斑(=りんご病)が流行しています.2015年6月にも流行しており,約3年半ぶりの流行です.

伝染性紅斑は,ヒトパルボウイルスB19により起こる疾患です.正式名称としてエリスロウイルスB19が提唱されていますが,依然としてヒトパルボウイルスB19という呼称が使用されています.

伝染性紅斑には,概ね4-5年の流行周期があります.季節的には,年初から7月にかけて流行が大きくなり,9月頃に下火になります.患者数は5-9歳が最多で,次いで0-4歳が多いです.

ヒトパルボウイルスB19のレセプターは赤血球膜表面にあるP抗原で,特に赤芽球前駆細胞に感染し増殖します.

ヒトパルボウイルスB19に感染すると,7-10日後に1次ウイルス血症が起こります.1-2日間の微熱や感冒症状が出現し,紫斑あるいは点状出血様の発疹が皮膚に出現することがあります.この時期はウイルス排泄量が最も多く,感染力が強いです.感染14-18日後に,両頬に直径数mmから2cm程度の紅斑が出現します.りんごのほっぺのようになり,「りんご病」と呼ばれます.紅斑はその後上肢から下肢にも拡がり,やがて癒合し特徴的な網状あるいはレース状の発疹になります.発疹は7-10日間で消退します.強い日差しなどにより発疹が再燃することがあります.年長児や成人では関節炎を合併することがあります.「りんご病」の時期にはウイルスの排泄はほとんどなく,感染力はありません.一度伝染性紅斑にかかれば,終生免疫を得ます.

ヒトパルボウイルスB19は伝染性紅斑のほかに,直接的な細胞障害=血球破壊により,溶血性貧血におけるaplastic crisis(無形成発作),免疫不全症における慢性骨髄不全を起こします.詳細な機序は不明ですが,高サイトカイン血症により特発性血小板減少性紫斑病,血管性紫斑病,急性・慢性関節炎,急性肺炎,急性脳症・脳炎を起こすことがあります.

妊婦が妊娠9-16週頃にヒトパルボウイルスB19に感染すると,胎児が重症貧血,肝障害による低アルブミン血症になり,皮下浮腫,肝腫大,脾腫大,胸水,腹水,羊水減少が起こり,さらにうっ血性心不全から胎児水腫へ進行し,やがては胎児死亡に至る場合があります.

ヒトパルボウイルスB19に感染したか否かは,抗体検査で分かります.しかし,保険診療上は,「紅斑が出現している妊婦について,ヒトパルボウイルスB19感染症が強く疑われる場合」に限られます.ご注意ください.

ヒトパルボウイルスB19感染を予防するワクチンはありません.

当院では,既に,りんごのほっぺのようになる「りんご病」の時期のお子さんを複数名確認しています.また,1次ウイルス血症による点状出血様の発疹の時期のお子さんも確認しています.今後,流行が広がることが予想されます.

ヒトパルボウイルスB19は伝染性紅斑だけでなく,様々な疾患や病態に関与します.流行期には注意が必要です.特に妊娠している方は十分ご注意ください.