2019年2月11日,大阪のあべのハルカス近鉄本店のバレンタインフェアの会場でアルバイトをしていた20歳代の女性2人が麻疹(=はしか)を発症したことが判明しました.その後,バレンタインフェア会場や別のフロアのイベントスペースの従業員や買物客からも患者が発生し,2月19日の時点でその数は合計22人に達したそうです.

細菌やウイルスの主な感染経路には,空気感染(飛沫核感染),飛沫感染,接触感染,経口感染,血液媒介感染などがあります.飛沫感染,接触感染,経口感染,血液媒介感染は,その経路を遮断することで感染を防ぐことが可能です.麻疹は,空気感染(飛沫核感染),飛沫感染,接触感染をします.麻疹は空気感染(飛沫核感染)もするため,容易に広がりやすいという特徴があります.

飛沫感染は,感染した人が咳,くしゃみ,会話をした際に口や鼻から飛んだ小さな水滴(=飛沫)に含まれる病原体を,近くにいる人が口や鼻から吸い込むことで成立します.インフルエンザなどは,飛沫感染をします.飛沫が飛び散る範囲は1-2mです.飛沫を浴びないようにすることで多くの場合は感染を防ぐことができます.感染者から2m以上離れる,マスクの装着,咳エチケットなどが有効です.

接触感染には,感染源に直接触れることで伝播が起こる直接接触感染(握手,抱っこ,キスなど)と,汚染されたものを介して伝播が起こる間接接触感染(ドアノブ,手すり,遊具など)があります.インフルエンザ,ノロウイルス胃腸炎などは,接触感染をします,病原体の付着した手で口,鼻,眼を触る,あるいは病原体の付着した遊具をなめることなどによって病原体が体内に侵入し,感染が成立します.対策としては,「手洗い」=手指衛生が最も重要です.正しい手洗いの方法を身につけ,励行することが大切です.タオルの共用は好ましくありません.使い捨てのペーパータオルが推奨されます.固形石鹸は不潔になりやすいので,液体石鹸の使用が推奨されます.

経口感染は,食物や水分に付着あるいは含まれている病原体が口から侵入し消化管に達して成立します.各種のウイルス性および細菌性胃腸炎は,経口感染をします.対策としては,食材の適切な温度管理,しっかりとした加熱調理などです.日本では,魚介類だけでなく牛肉や卵などを生で食べる習慣があるので注意が必要です.

血液媒介感染は,血液に潜んでいる病原体が傷ついた皮膚や粘膜から体内に侵入して感染が成立します.B型肝炎などは,血液媒介感染をします.対策としては,血液などの体液を取り扱う時には手袋をします.手などに傷がある時には特に注意が必要です.

一方,空気感染(飛沫核感染)では,上記のような一般的な対策はほぼ無効です.空気感染では,感染している人が咳やくしゃみ,会話をした際に,口から飛び出した小さな飛沫が乾燥し,その芯となっている病原体(=飛沫核)が感染性を保ったまま空気の流れによって拡散し,近くの人だけでなく,遠くにいる人もそれを吸い込んで感染します.空気感染は,室内などの密閉された空間内で起こります.同じ部屋の中だけでなく,空調が共通している部屋の間でも感染が起こります.感染範囲は空間内の全域になります.空気感染する主な疾患は,麻疹,水痘,結核です.空気感染対策の基本は,「発病者の隔離」と「部屋の換気」です.結核は排菌している患者と長時間空間を共有しないと感染しませんが,麻疹や水痘を発症している患者とたとえ短時間でも同じ部屋にいれば感染する可能性が高いと考えられています.麻疹や水痘では,感染源となる発病者と同じ空間を共有しながら感染を防ぐことができる有効な物理的対策はありません.麻疹,水痘,結核への有効な対策は事前にワクチン接種を受けておくことです.

あべのハルカスでの麻疹の集団感染では,バレンタインフェアの会場以外にいた人にも麻疹患者が発生しています.麻疹は極めて感染力が強く,死亡率が高い疾患です.全国的にも麻疹患者が増加中で,今後の流行が危惧されます.年齢に関わらず未罹患の場合には,最低2回のワクチン接種が必要です.未接種の場合,1回しか接種を受けていない場合にはすぐに接種を受けてください.