アレルゲン免疫療法は,抗原(=アレルゲン)を少量から投与することで,からだを抗原に慣らしていく治療法です.アレルゲン免疫療法には,皮下免疫療法と舌下免疫療法があります.皮下免疫療法は皮下に注射する治療法で,医療機関で行われます.注射であるため痛みを伴い,長期間の通院が必要になります.一方,舌下免疫療法は舌下に治療薬を投与するため痛みがなく,自宅で服用できます.日本では,スギ花粉症とダニアレルゲンによる通年性アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法が保険適応になっています.

当院では,スギ花粉症については一部「シダトレンスギ花粉舌下液(シダトレン)」,主に「シダキュアスギ花粉舌下錠(シダキュア)」を,通年性アレルギー性鼻炎については「ミティキュアダニ舌下錠(ミティキュア)」を使用して,スギ花粉症とダニ通年性アレルギー性鼻炎の根本的治療を行っています.

シダトレンは,シダトレンスギ花粉舌下液200JAU/mLを1日1回0.2mLから服用を始め,2週間は徐々に増量し,その後はシダトレンスギ花粉舌下液2000JAU/mLを1日1回1mL服用します.舌下で2分間保持した後,飲み込みます.その後5分間はうがい,飲食を控えます.

シダキュアは,投与開始後1週間はシダキュアスギ花粉舌下錠2000JAU を1日1回1錠,投与2週目以降はシダキュアスギ花粉舌下錠5000JAU を 1日1 回1錠服用します.舌下で1 分間保持した後,飲み込みます.その後5分間は,うがいや飲食を控えます.

ミティキュアは,投与開始後1週間はミティキュアダニ舌下錠3300JAU を1日1回1錠,投与2週目以降はミティキュアダニ舌下錠10000JAUを 1日1 回1錠服用します.舌下で1 分間保持した後,飲み込みます.その後5分間は,うがいや飲食を控えます.

添付文書には,口腔腫脹や浮腫,口腔搔痒感,口腔内不快感,口の錯感覚,咽頭刺激感,咽喉頭不快感,耳搔痒症などの副作用が,シダトレンでは1-2%,シダキュアとミティキュアでは5%程度に起こると記載されています.喉のイガイガなど症状が軽微な場合には,シダトレン,シダキュア,ミティキュアの継続は可能です.しかし,症状が強い場合には減量あるいは中止になる場合があります.当院では,シダトレンを10数人,シダキュアを約100人,ミティキュアを約300人に投与しました.シダトレンで服用中止になった方はいませんが,シダキュアでは数名,ミティキュアでは10数名の方が減量または中止になってしまいました.ミティキュアは抗原量が元々多いために,シダトレンやシダキュアよりも副作用の発生率が高くなります.シダキュア維持期の抗原量はシダトレンの2.5倍のため,シダキュアの方がシダトレンよりは副作用が出現しやすいです.3剤の副作用発現率の違いは,こうした事情が背景にあります.

副作用により通常の服用方法での治療の継続が困難な場合には,「吐き出し法」が有効です.シダトレンでは2分間,シダキュアとミティキュアでは1分間,舌下で保持した後に,吐き出します.その後5分間は,うがいや飲食を控えます.

スギ花粉症に対する舌下免疫療法の開発段階では,1.5cm立方のパンにスギ花粉エキスを染み込ませて舌下に2分間保持した後にパンを吐き出していました.吐き出し方でも,効果があることが分かっています.

皮膚や粘膜の表面に近い部分には,ランゲルハンス細胞や樹状細胞と呼ばれる抗原提示細胞が存在します.外界から生体内に侵入した抗原は抗原提示細胞に認識され,この情報が所属リンパ節に伝達され免疫反応がおきます.マウスの皮膚にワクチン液を接種した直後に大急ぎで所属リンパ節を摘出しても,免疫反応は起きています.このように抗原認識は瞬時に起こるため,吐き出し法で舌下免疫療法を行っても十分に効果があります.

喉のイガイガが強くて舌下免疫療法の継続が困難な場合には,当院にご相談ください.多くの場合,「吐き出し法」により治療の継続が可能です.