2019年4月8日,「第20回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会」が開催され,一部のメーカーの4種混合ワクチンとB型肝炎ワクチンの製造が既に中止され,数カ月以内に供給が停止になる見込みであることが報告されました.

https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000499341.pdf

4種混合ワクチン(ジフテリア,百日咳,破傷風,不活化ポリオワクチン)は,通常生後3カ月から3回,その約1年後に1回,合計4回の接種を行います.現在,国内では第一三共(株),(財)阪大微生物病研究会,KMバイオロジクス(株)の3社が製造しています.2016-2018年度の実績では,1年間に3社合計で380-410万本が医療機関に納入されています.第一三共(株)は,年間120万本程度を製造しています.2019年4月,同社は,工場が老朽化したため新工場で試験製造を行ったところ,百日咳ワクチンの原液が規格外であり製造プロセスが確立していないために4種混合ワクチン「スクエアキッズ」の製造を中止していること,供給再開の見込みが立っていないこと,現在の在庫をもって欠品すること,現状の需要を鑑みた場合には2020年5月までは供給可能(最終ロットの有効期限は2020年12月27日)であることを,厚生労働省健康局健康課に報告しました.

B型肝炎ワクチンは2016年10月1日より定期接種化され,通常乳児期に3回の接種を受けます.同年4月1日以降に出生した児は公費負担で接種を受けており,接種率はほぼ100%です.それ以前に生まれた児は任意接種ですが,当院では積極的に接種を勧めています.このほか,母子感染予防の対象児,医療従事者,高頻度国への渡航者などが接種を受けています.国内の需要は,1年間に350-450万回接種分程度と考えられています.B型肝炎ワクチンは,KMバイオロジクス(株),MSDの2社から年間350-640万回接種分程度が市場に供給されています.2016-2018年度の実績では,それぞれ年間60-180万回接種分,240-520万円接種分を製造しています.2019年4月,MSDは原液製造の工程で所定の規格を満たさない事象が断続的に発生したために,日本及び世界各国に向けて供給している全てのB型肝炎ワクチン「ヘプタバックス」の製造を自主的に中止していること,数カ月後には供給ができなくなること,製造及び供給の再開は早くても2020年半ばになることを,厚生労働省健康局健康課に報告しました.

厚労省は,4種混合ワクチンについては(財)阪大微生物病研究会,KMバイオロジクス(株),B型肝炎ワクチンについてはバイオロジクス(株)による増産によって,今後も国内需要を賄えるとしています.過去に同様のことが何度も繰り返されていて,その度に厚労省は「供給が需要を上回るはずだ.不足しない.」と言うのですが,医療現場では「ワクチンが足りない,入荷の見込みが立たない,予約受付を一時中止.」という事態に追い込まれてしまっています.出荷の一時的な遅れ,流通過程における停滞や偏在,一部医療機関の抱え込みなどが,実際には起こってしまうためです.

当院では,4種混合ワクチンはKMバイオロジクス(株)の「クアトロバック」を使用しています.第一三共(株)の「スクエアキッズ」の製造中止の直接的影響は受けないはずですが,約25%のシェアを持つ「スクエアキッズ」が市場からなくなるわけですから全く影響がないということはありません.(財)阪大微生物病研究会,KMバイオロジクス(株)の増産に期待するしかありません.

当院では,B型肝炎ワクチンはMSDの「ヘプタバックス」を使用しています.70%強のシェアを持つ「ヘプタバックス」が市場からなくなります.増産が期待できるのはKMバイオロジクス(株)だけです.同社の工場は熊本にあり,3年前の熊本地震からの復旧を遂げたところです.KMバイオロジクス(株)が大増産をしない限り,B型肝炎ワクチンの不足を回避することはできません.

4種混合ワクチン,B型肝炎ワクチンは早目に接種を済ませてください.今後の動向に注意が必要です.