成人だけでなく小児に対しても,日常診療で漢方薬はよく処方されています.小児の感冒,インフルエンザ,鼻閉(鼻詰まり),中耳炎などには,麻黄湯(まおうとう),人参養栄湯(にんじんようえいとう),柴胡桂枝湯(さいこけいしとう),麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう),十全大補湯(じゅうぜんたいほ湯)などが有用です.

感冒などにより高い熱が出た場合には,まず麻黄湯を服用します.麻黄湯を飲むとからだがポカポカしてきて汗がよく出るようになります.汗をたくさんかくと体温が下がり,からだが楽になります.解熱後,咳が多くて元気がない場合には人参養栄湯を,微熱が続きやや元気がない場合には柴胡桂枝湯に切り替えます.体調が回復して,健康な状態に戻りやすくなります.

RSウイルス感染症やヒトメタニューモウイルス感染症では多くの場合発病当初には発熱があるので,まず麻黄湯を服用します.その後熱は下がりますが,咳が2-3週間続くことがあります.乾いた咳の場合には麦門冬湯,湿った咳の場合には麻杏甘石湯に切り替えます.気管支喘息にも麦門冬湯や麻杏甘石湯は有効で,同様に乾いた咳には麦門冬湯,湿った咳には麻杏甘石湯を用います.

インフルエンザは突然の発熱で発症します.発熱時には,麻黄湯が有効です.からだがポカポカして汗が出て,熱が下がります.インフルエンザには抗インフルエンザ薬が使用されますが,麻黄湯と併用することも可能です.解熱後,だるさが残る場合には柴胡桂枝湯,乾いた咳で痰が貼り付いて出ない場合には麦門冬湯に切り替えます.インフルエンザの診断には迅速診断キットが用いられていますが,発熱初日はウイルス量が少なく陽性を示さないことがあります.この場合,まず麻黄湯だけを服用します.翌日発熱が続く場合には再度検査を行い,陽性であれば抗インフルエンザ薬を併用開始します.抗インフルエンザ薬が効かない耐性ウイルスが存在します.また,B型インフルエンザは抗インフルエンザ薬が効きづらい場合があります.こうした場合にも麻黄湯は有効です.

アデノウイルスなどによる急性咽頭炎では高熱が出る場合があります.この場合,まず麻黄湯を服用します.解熱後,だるさが残ることが多いので柴胡桂枝湯に切り替えて体調の回復を待ちます.

麻黄湯は,新生児や乳児の鼻閉やこれに伴う哺乳困難の改善に有効です.麻黄湯を服用すると10分間くらいで鼻が通るようになり,楽に母乳やミルクを飲むようになります.赤ちゃんの鼻閉に対しては,大人の口で吸うあるいは鼻水吸引器の使用も有効です.古典的方法として,母乳を1滴ずつ両鼻に垂らすと赤ちゃんの鼻閉が改善することがあります.このような方法と,麻黄湯の服用を併用するのがよいでしょう.

急性中耳炎を6カ月に3回,1年間に4回以上繰り返す場合を,反復性中耳炎と呼びます.反復性中耳炎は2歳未満の免疫能の未熟な乳幼児に起こりやすく,この場合には十全大補湯が有効です.十全大補湯には免疫賦活作用があり,以前より乳児の肛門周囲膿瘍に有効であることが知られていました.十全大補湯を服用することにより,急性中耳炎が起こりにくくなります.

当院では,各種疾患に漢方薬を使用しています.ご希望の方は,是非ご相談ください.