5歳以上の小児が就眠中に尿を漏らす現象を「夜尿」と呼びます.1カ月に1回以上の夜尿が3カ月以上続くものを「夜尿症」と定義します.日本では,5-15歳の小児の6.4%,約80万人が夜尿症と推定されています.小学校入学時で11-13%,中学校入学時で3-5%,高校入学時で1%が,夜尿症です.概ね1年で15-17%が治癒して行きます.成人の200人に1人は夜尿症という報告があり,小児だけの病気ではありません.

夜尿症の治療では,まず生活習慣の改善を図ります.適切な夕食時間の設定,夕方から夜間にかけての飲水制限などを行います.生活習慣の改善だけで効果が不十分な場合には,合成抗利尿ホルモン薬であるミニリンメルトOD錠の投与またはアラーム療法を行います.アラーム療法に用いる機器を「夜尿アラーム」と呼びます.

ミニリンメルトOD錠は,50-70%の症例で完全ではないものの効果があり,その発現は速やかです.しかし,完全に夜尿が消失する症例はごく少数で,副作用として水中毒が稀に起こります.一方,アラーム療法は少なくとも65%の症例で夜尿が解消し,夜尿を治癒させることができます.また,薬ではないので無害です.しかし,効果が出現するまでに数週間から数カ月を要し,家族の負担が大きく,保険適応がないため購入またはレンタルの費用がかかります.

アラーム療法は条件づけ療法の1つです.夜間多尿よりも覚醒困難の夜尿症に,より有効です.海外では治療の第1選択として用いられています.夜尿のない子どもは,睡眠中の膀胱容量が昼間の1.5倍になっても排尿を我慢できます.一方,夜尿症では昼間と同程度かそれ以下の膀胱容量しかないため我慢ができずに,「おねしょ」をしてしまいます.アラーム療法により,夜間の膀胱容量が増え,夜尿が朝方にシフトし,やがて夜尿がなくなります.

アラーム療法は,週3回以上の夜尿がある患児で,本人に高い治療意欲があり,家族の理解と協力が得られる場合に適応になります.夜尿アラームに即効性はありません.使用期間は3カ月以上です.短期間の使用,断続的な使用では効果が上がりません.

夜尿アラームを使うには,パンツまたはオムツに尿漏れを感知するセンサーを取り付けます.「おねしょ」をするとセンサーから信号が送られ,枕元に置いたアラームが作動します.毎晩就寝前に患児がアラームをテストし,アラームが作動したら1-2分後には起きるように,シュミレーションします.「おねしょ」をしてアラームが作動したら,患児がアラームを止め,起きてトイレへ行き,残りの排尿を済ませます.アラームは患児本人が止めます.アラーム療法開始直後は,アラームが作動してもほとんどの患児が自分で覚醒できません.この場合,保護者が患児を起こします.患児が完全に覚醒し,夜尿をしたことをしっかり認識することが大切です.患児は覚醒して排尿を済ませ寝室に戻ったら,自分自身でシーツ,下着,パジャマを取り替えます.シーツの替えや着替えは枕元に用意しておきましょう.センサーについた尿をまず湿った布で,次に乾いた布で拭き取り,再度アラームをセットして眠りにつきます.センサーの手入れも患児が自分で行います.

アラーム療法は毎晩必ず続けてください.週末だからお休みしよう,などという甘い考えは捨ててください.夜尿がなかった日や夜尿があっても患児が上手に対応できた場合には,必ず褒めてあげてください.失敗をしたから怒る,ペナルティを与えるのは逆効果です.14日間以上連続で夜尿が消失するまで,アラーム療法を続けます.これには5-24週(多くは12-16週)要します.アラーム療法を3カ月行い,完全に夜尿が消失しないけれども夜尿日数が減っている場合には続行します.一方,3カ月行っても全く効果がない場合には中止します.アラーム療法終了後に再発(=2週間で3回以上の夜尿)した場合には,再度アラーム療法を行います.多くの場合,1回目よりも早い効果が期待できます.

アラーム療法の有効率は,5-12週間の使用で65-75%です.早期のドロップアウトが15-20%,アラーム療法終了後6カ月以内の再発率が15-30%です.アラーム療法は,1晩で1回のアラーム作動,起床時尿量が少ない場合に効果が高く,1晩で2回以上のアラーム作動,家族が協力をしない,夜間多尿が場合には効果が低くなります.アラーム療法が無効な場合には,ミニリンメルトOD錠を併用します.アラーム療法が続けられない場合には,ミニリンメルトOD錠の服用に切り替えます.

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夜尿症の治療をご希望の方は当院にご相談ください.適切に治療します.