気管支喘息の発症や増悪に関わる環境因子としては,アレルゲン(ダニやハウスダスト,ネコ,イヌ,ハムスターなどのペット,スギ,カモガヤ,ブタクサ,ヨモギなどの花粉,アルテルナリアなどの真菌,ゴキブリやユスリカなどの昆虫),ウイルス(RS,ライノ,ヒトメタニューモ,インフルエンザなど),細菌(マイコプラズマ,百日咳など),大気汚染物質(タバコ,PM2.5,黄砂,花火,線香,蚊取り線香,たき火,自動車の排気ガスなど)等が知られています.

環境因子としては,気象も重要です.気管支喘息の発作が気候の安定する真夏や真冬に少なく,春や秋などの季節の変わり目とくに梅雨や秋雨の頃に多いことは,従来からよく知られています.小児や若年成人では,秋が喘息発作の最も多い季節です.低気圧や寒冷前線が通過する時に喘息発作が多発することは,臨床現場でしばしば経験されることです.

気象因子としては,気温,湿度,気圧があげられます.これらのうち喘息の悪化因子として最も重要なものは,急激な気温の変化です.前日に比べ3℃以上あるいは5時間以内に3℃以上の気温低下があった場合には,喘息発作が起こりやすいことが知られています.湿度や気圧の直接的な作用については一定の見解は得られていません.

気象因子の間接的な作用としては,気象変化に伴うハウスダストなどのアレルゲンの飛散や浮遊,高温や多湿によるダニやカビの繁殖,心理ストレスなどがあります.

気象変化の影響を100%回避することは困難ですが,春や秋などの季節の変わり目には,気温の変化に注意して衣服を調節しましょう.冬であれば,寒い日の外出にはマスクを着用するなどの配慮が必要です.従来,夏には喘息発作は少なかったのですが,最近は冷房の普及により喘息の増悪が認められる場合があります.冷気による気道収縮により喘息発作が誘発されることがあるので,冷房の効き過ぎには注意しましょう.

今年は8月中旬に台風の襲来に伴うフェーン現象が起き,新潟県では40℃を超える最高気温を記録しました.8月第4週に入って,秋雨前線の出現により不安定な天候になり,朝夕の気温が低下して来ました.このため,喘息発作を起こして来院するお子さんが増えています.

気管支喘息の治療では,とにかく発作を起こさないようにコントロールすることが重要です.一旦発作が起きると,気道粘膜は荒れてしまいます.咳や喘鳴が表面上なくなっても,気道粘膜の荒れは数カ月間続きます.この間,気道過敏性は亢進したままなので,気象因子を含む環境因子によって容易に発作が起きてしまいます.発作を頻繁に繰り返すと気道粘膜の荒れが固定化し,だんだん薬物治療に反応しづらくなり,やがては難治性喘息に移行します.

一般的には2-3年間無発作の状態が続いた場合に,気管支喘息の治療が終了になります.少しばかり状態がよいと治療を自己中断してしまい秋になって発作が起きてから慌てて受診する方がいますが,このようなことを繰り返すといつまで経っても喘息は治りません.良好なコントロールを得るためには,服薬,吸入療法の励行,環境整備などが必要です.

普段からきちんと治療を行い,喘息発作が多発する秋に備えてください.