2018/19 シーズンの日本におけるインフルエンザの流行は,近年では最も大きな流行でした.流行したウイルスの亜型の比率は,A(H1N1)pdm09が68%,A(H3N2)が31%とA 型が大半を占め,B 型の流行はほとんどなく,わずかにB/山形系統とB/ビクトリア系統のウイルスが検出されました.海外諸国でも同様に,A(H1N1)pdm09 が流行の主流で,B型の流行は限定的なものでした.

季節性インフルエンザワクチンには,4つのウイルス株が含まれています.2019/20シーズンの製造株は以下のように決定されました.A型の2株は変更になり,B型の2株には変更はありません.選定理由は以下の通りです.

A/H1N1pdm09亜型:A/ブリスベン/02/2018(IVR-190)
2018/19シーズンは多くの国でA(H1N1)pdm09ウイルスが流行の主流でした.最近のウイルスの大半は183 番目のアミノ酸がプロリンに置換されています(=183P 置換).2018/19 シーズン北半球向けの WHOワクチン推奨株A/ミシガン/45/2015または日本で採用したワクチン製造株 A/シンガポール/GP1908/2015(IVR-180)を含むワクチン接種後のヒト血清抗体を用いた解析では,183P 置換を持つ最近の流行株は反応性が低下する傾向が見られ,特に小児血清で反応性低下が大きくなっていました.このことから,WHO は次シーズンの A(H1N1)pdm09 ワクチン株として 183P を持つ流行株から選定するのが妥当と判断しA/ブリスベン/02/2018 類似株を推奨し,日本国内ではA/ブリスベン/02/2018(IVR-190)が選定されました.

A/H3N2亜型:A/カンザス/14/2017(X-327)
2018/19シーズンのA(H3N2)ウイルスの流行は,世界的には全体としてA(H1N1)pdm09ウイルスに次ぐ規模でしたが,国によってはA(H3N2)ウイルスが流行の主流のところもありました.日本国内では,2019年第2週以降はA(H3N2)ウイルスの検出数がA(H1N1)pdm09ウイルスを上回りました.流行株は大きく3C.2aおよび3C.3aに分類され,3C.2aはさらにサブグループ3C.2a1bおよび3C.2a2に分類されます.世界的には,3C.2a1b に属する流行株が最も多く検出されましたが,11月以降欧米の一部の国で3C.3aに属する株の検出が急増しました.日本国内では,3C.3aに属する株は検出されませんでした.しかし,3C.3aに属する株が今後世界的に流行する可能性があり,2018/19シーズンのワクチン推奨株A/シンガポール/INFIMH-16-0019/2016類似株とは抗原性が異なり,ほとんどのヒトは3C.3a株に対する免疫が低いことから,WHOは2019/20シーズンのA(H3N2)ワクチン株として3C.3aに属する流行株から選定するのが妥当と判断し,A/カンザス/14/2017類似株を推奨しました.日本国内では,ワクチン株としてA/カンザス/14/2017(X-327)が選定されました.

B型(山形系統):B/プーケット/3073/2013(B/山形系統)
2018/19シーズンの山形系統株の流行は国内外ともに非常に小さく,抗原変異もほとんどなかったことから,2019/20シーズンのワクチン株に変更はありません.

B型(ビクトリア系統):B/メリーランド/15/2016(NYMC BX-69A)
2018/19シーズンのビクトリア系統株の流行は国内外ともに非常に小さく,流行株の一部に変異が見られるものの2018/19シーズンワクチン株との反応性は良好であることから,2019/20シーズンのワクチン株に変更はありません.

当院では,10月7日より接種を開始します.ワクチンの製造不良,流通の遅滞,買い占めなどにより,ワクチンが突然入手できない事態が生じることがあります.実際,過去に何度も起きています.昨シーズンは,ワクチン株の増殖不良のために必要本数が納入されませんでした.このように当院の責任を超えた事態が生じた場合には,予約をお受けしても接種ができなくなることがあります.ご承知おきください.

インフルエンザは高熱が続き,関節炎,肺炎,中耳炎など多くの合併症を引き起こします.ときに,脳炎脳症が起こり,死亡することがある病気です.10-11月にはインフルエンザワクチンの接種を必ず受けてください.早目の接種をお勧めします.