2019年9月18日,国立感染症研究所感染症疫学センターは「風疹に関する緊急情報」を出しました.2019年1月から9月15日までの日本国内における風疹累積患者数は2190人になり,この間に埼玉県,東京都,大阪府で各1人,合計3人の先天性風疹症候群児が生まれました.

風疹は,風疹ウイルスによっておこる病気です.感染してから2-3週間後に,赤くて小さな発疹が体中に出ます.熱は全く出ない場合もあれば,3日間高熱が続く場合もあります,頚部リンパ節が腫れることがあります.風疹にかかると,特発性血小板減少性紫斑病,脳炎,関節炎を併発することがあります.妊娠初期に風疹にかかると,生まれてくる赤ちゃんの目や耳や心臓に障害をきたすことがあります.これを「先天性風疹症候群」と呼びます.風疹を直接治療する方法はありません.

日本では,1976年,1982年,1987年,1992年を中心に概ね5年間隔で風疹が全国的に流行しました.その後,大きな流行はなくなりましたが,2002年から2004年に局地的流行がありました.2012年から2013年にかけて風疹が全国的に流行しました.患者報告数は16749例で,成人が9割を占めていました.内訳は,男性が80%,女性が20%で,男性は20-40歳代,女性は20歳代に多くの患者発生がありました.男性の95%,女性の88%が風疹ワクチンの接種歴が「なし」または「不明」でした.女性の感染経路は,夫が最多で,職場がこれに次いでいました.この時の流行は,海外の流行地域から風疹ウイルスが持ち込まれ,日本全国に波及したものでした.この流行の後,2012年から2014年にかけて,先天性風疹症候群児が判明しているだけで45例生まれました.

このように,日本では風疹の流行が抑制されておらず,先天性風疹症候群児が生まれています.その理由は以下の通りです.

現在は1歳と小学校入学前1年間の2回,麻疹風疹ワクチンとして公費負担で個別接種が行われています.1990年4月2日以降に生まれた人は現行制度またはその後の措置により2回の個別接種を受ける機会があり,風疹抗体保有率は男性で95.4%,女性で96.5%です.しかし,それ以前に生まれた人では,接種回数や方法あるいは接種年齢が生まれ年や男女で異なっています.1979年4月2日から1990年4月1日までに生まれた人は幼児期または中学生の時に1回の個別接種を受けており,風疹抗体保有率は男性で90%,女性で95%です.1962年4月2日から1979年4月1日までに生まれた人は,男性は接種を全く受けておらず,女性は中学生の時に1回の集団接種を受けています.この年齢層では,風疹抗体保有率は男性で79.6%,女性で96.7%です.1962年4月1日までに生まれた人は接種を全く受けていませんが,風疹抗体保有率は男性で92.6%,女性で92.2%です.

このような状況を受けて,厚生労働省は,「風しんの追加的対策」を実施しています.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/index_00001.html

風疹抗体保有率が低い1962年4月2日から1979年4月1日までに生まれた男性には,市町村から原則無料で風疹抗体検査とワクチン接種を受けることができるクーポン券が送付されます.まず医療機関で風疹抗体の検査を受け,十分な抗体がない場合にはワクチン接種を受けてください.2019年度は,1972年4月2日から1979年4月1日までに生まれた男性にクーポン券が送付されます.2020年度以降,1962年4月2日から1972年4月1日までに生まれた男性に順次送付される予定です.

2019年9月10日の時点で,2019年度にクーポン券が発送予定の646万人のうち,2019年4-6月にクーポン券を使用して風疹抗体検査を受けたものが339602人(対象者の5%),ワクチン接種を受けたものが54054人(同0.8%)いたそうです.

当院にも,既に数名の男性がクーポン券を持参して風疹抗体検査を受けに来院しています.対象者はこの機会に是非とも検査を受けてください.