2019年11月,当院周辺ではインフルエンザの本格的流行が開始しました.10月初旬に見附市および長岡市和島地区でA型インフルエンザの患者発生が確認されました.その後,一旦患者発生はなくなりました.しかし,11月中旬より長岡市中之島地区,見附市でA型インフルエンザの患者が再び発生し,流行が拡大しています.既に学級閉鎖の措置を取った小学校もあるようです.例年よりもかなり早い流行開始です.

インフルエンザの主な症状は,5-7日間の高熱,寒気,全身がだるい,食欲がない.頭痛,手足の筋肉痛,腰の痛み.腹痛,吐く,下痢,のどの痛み,鼻みず,咳です.典型的な熱型は2峰性です.3-4日高熱が続いて(1つ目のヤマ),一旦下がり,その後再び発熱して(2つ目のヤマ),やっと熱が治まります.頑固な咳が1週間残ります.

インフルエンザの診断には,迅速診断キットを用います.微熱あるいは高熱でも発熱直後にはウイルス量が少ないため,陽性を示しません.このような場合には,翌日の再検査が必要です.高熱が生じて一晩経過すると陽性を示すことが多いので,受診のタイミングが大切です.インフルエンザ迅速診断キットの使用は,保険診療上,「1エピソードについて発熱後48時間以内に2回まで」「同日の再検査は不可」「最終検査から1週間以内の再検査は不可」となっていて,その使用には制約があります.例えば初日に微熱で受診し迅速診断キットで陰性,翌日に高熱で再検査をして陰性の場合には,翌々日の検査は保険適用外でさらに処方なども全て自己負担になります.保険診療上,混合診療は禁止されています.ご注意ください.

インフルエンザの治療には,タミフル,リレンザ,イナビル,ラピアクタなどの抗インフルエンザ薬を使用します.これらは剤型や投与回数に違いがありますが,全てノイラミニダーゼ阻害薬で作用機序は同一です.過去にタミフル服用後の異常行動による事故が報告され,厚生労働省は10-19歳のインフルエンザ患者に対してタミフル投与を原則として禁止していましたが,現在この制限は解除されています.タミフル服用の有無にかかわらず,インフルエンザを含む高熱疾患では,熱せん妄(うわ言,夢中歩行,飛び降りなどの異常行動)が起こることが知られています.インフルエンザと診断された場合には,様子をよく観察し十分に注意してください.抗インフルエンザ薬は,発熱後48時間以内に使用しないと効果がありません.症状や周辺状況からインフルエンザが強く疑われる場合には,インフルエンザ迅速診断キットで陰性でも抗インフルエンザ薬を処方することがあります.

昨シーズンから本格的に導入された新しいタイプの抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」は,1回の内服で治療が済み,ウイルス消失効果が高いことから,臨床現場でも盛んに処方されました.しかし,その後の調査で,アミノ酸変異が生じた低感受性のインフルエンザウイルスが検出され,その割合はA(H1N1)pdm2009で1.5%(0-11歳で1.7%,12-19歳で2.9%,20歳以上で0%),A(H3N2)で9.4%(0-11歳で12.1%,12-19歳で11.1%,20-64歳で1.9%,65歳以上で0%),B型で0%でした.日本感染症学会の提言では,「12歳未満の小児では低感受性株の出現頻度が高いことから,ゾフルーザは慎重に投与する.」となっており,単独投与は非推奨と付言されています.
http://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=37

インフルエンザの発熱に対する解熱剤は,第1選択がアセトアミノフェン(アンヒバ坐薬,カロナールなど),第2選択がイブプロフェン(ブルフェンなど)です.アスピリン,サリチル酸を含む製剤,ジクロフェナク(ボルタレンなど),メフェナム酸(ポンタールなど)などは,インフルエンザ脳症を引き起こす可能性があるので使用してはいけません.

インフルエンザにかかった場合には,とにかく安静が大切です.無理に厚着をする,こたつにもぐり込む必要はありません.寒くない程度の暖房で十分です.高熱時に温め過ぎると,「うつ熱」になり,かえって体力を消耗します.少し涼しいくらいの方が熱は放散します.高熱時には薄着にして,布団や毛布を1枚減らし,アイスノン等で体を冷やしてください.大きなアイスノンをわきの下,首筋,股にあてると,熱が下がります.頭を冷やすと気持ちはいいですが,熱を下げる効果はそれほどありません.熱さまシートにも,解熱効果はほとんどありません.水分を十分にとるように心がけてください.汗や尿とともに体から熱が逃げていって,熱が下がりやすくなります.経口補水液(OS-1,アクアライトORS)がよいでしょう.番茶やジュースには塩分が含まれておらず,市販のスポーツドリンクは塩分濃度が十分でないため,脱水予防や改善には不適当です.高熱でぐったりしている時以外はお風呂に入って差し支えありません.疲れないように気をつけて,お風呂でサッパリしてください.

インフルエンザの合併症で最も恐ろしいのは,インフルエンザ脳症です.発熱後24-48時間以内に発症し,痙攣,意識障害が起こります.死亡率が10%,後遺症出現率が25%です.インフルエンザ診断時に,脳症を発症するか否かを予見することはできません.抗インフルエンザ薬に,脳症を防ぐ効果は証明されていません.

学校保健安全法により,「発症した後5日を経過し,かつ,解熱した後2日(幼児では3日)を経過するまで」は出席停止です.解熱日が特定できないと,登校許可日を決められません.再診時には,登校許可証と熱型表を必ず持参してください.