アトピー性皮膚炎は,アレルギー素因による免疫学的異常に乾燥肌や皮膚バリア機能の異常や破綻が加わって発症します.

皮膚の最表層には皮脂膜があります.皮脂膜は,皮脂と汗が混じり合って形成されたものです.成分としてスクワレン,トリグリセリド,ワックス,脂肪酸,コレステロールなどを含み,水分の蒸発を抑制します.皮脂膜の下には,角層があります.角質細胞内には天然保湿因子があり,成分としてアミノ酸,ピロリンカルボン酸,乳酸塩,尿素を含み,細胞内の水分を保つ働きがあります.角層細胞間脂質は,角層の細胞間を満たす脂質です.成分としてセラミド,脂肪酸,コレステロールを含み,バリア機能を発現します.角層の下には,顆粒層があります.顆粒層の細胞間にはタイトジャンクションが存在し,透過性バリアの役割を演じています.皮膚のバリア機能や水分保持能は,このように多くの因子が関わっています.

皮膚の水分量を測定することは,アトピー性皮膚炎や乾燥肌の治療に有用です.当院では,携帯型皮膚水分計「モバイルモイスチャー・HP10-N」を導入し,角質水分量を測定しています.

角質水分量の測定には,皮膚に微弱な電流を流した際の抵抗・導電などの電気的な特性を利用した方法が用いられています.測定法は,主に,キャパシタンス法,コンダクタンス法,フェーズアングル法に分類されます.これらのうち,コンダクタンス法は皮膚表面の電解質の影響を受けやすく,フェーズアングル法は低水分量帯における感度が低いことが指摘されています.正確な測定にはキャパシタンス法が用いられることが多く,ドイツのCourage+Khazaka社製のコルネオメーターが標準機器として数多くの研究に使用され,ヨーロッパの測定ガイドラインなどに掲載されています.しかし,コルメオメーターは高価であり,機器自体が大きいため,日常臨床での使用には限界があります.

モバイルモイスチャー・HP10-Nはコルネオメーターの簡易型として開発された機器であり,ペン型でポケットに収まるサイズで比較的安価です.コルネオメーターと同じ測定原理が用いられています.いくつかの臨床研究で,モバイルモイスチャー・HP10-Nとコルネオメーターの測定値はよく相関し,信頼性が高いことが証明されています.

モバイルモイスチャー・HP10-Nの使用方法は以下の通りです.
(1)衣類による蒸れの影響をなくすため,測定部位を予め露出しておきます.
(2)先端の四角い電極を,皮膚に対して垂直且つ均一に押し当てます.
(3)”ピッ”という音が鳴ると数値が表示されるので,皮膚から離します.
(4)3秒ほどの間隔を空けて,数回測定します.
(5)エラーデータを除き平均値を算出し測定値とします.
*測定間隔が短過ぎると,皮膚と電極の間に蒸れが発生し,測定値が高めになってしまいます.
*先端の四角い電極が皮膚に垂直に当たっていない場合には,極端に低い測定値になってしまいます.

モバイルモイスチャー・HP10-Nによる測定値の解釈は以下の通りです.
(背中・首)30以下:非常に乾燥している,30-60:乾燥している,60以上:十分な水分量がある
(腕,足)5以下:非常に乾燥している,5-25:乾燥している,25以上:十分な水分量がある
上記は,室温20℃,湿度40-60%の室内での基準値です.部位,年齢,性別,季節などにより皮膚の状態が異なるため,正確な基準値を設けることは困難です.現状では,20以下を乾燥と判断し,30-40以上の値を維持できるようにスキンケアをするのが良いでしょう.

皮膚を触ってザラザラしていない場合でも,あるいは乾燥していないように見えても,モバイルモイスチャー・HP10-Nで測定すると20以下の場合があります.特に顔面は,触診や視診による印象と,測定値が乖離していることがあります.また,見た目には同じでも,下腹部から腰にかけてはパンツやオムツが擦れて皮脂がはがれやすいため,上腹部に比べて測定値が低めです.モバイルモイスチャー・HP10-Nにより角質水分量を測定することにより,客観的に皮膚の乾燥の程度を評価できます.

当院では,アトピー性皮膚炎や乾燥肌の診療に,携帯型皮膚水分計「モバイルモイスチャー・HP10-N」を使用しています.ご心配な方は,ご相談ください.適切に診断,治療します.