気道過敏性の亢進とは?

気管支喘息の発作時には,空気の通り道である気道が狭くなり空気の流れが妨げられます.その結果,ゼイゼイやヒューヒュー(喘鳴),咳がひどい,息が苦しい・胸が苦しい(呼吸困難)などの症状が起こります.このような場合,気管支平滑筋の収縮(気道が狭くなる)とともに,気道粘膜の浮腫(気道がむくむ),気道分泌物の増加(痰が増える),炎症細胞の浸潤,気道上皮の障害などが生じ,気道およびその粘膜は荒れた状態になってしまいます.β2刺激薬などの投与により,喘鳴,咳,呼吸困難などの表面上の症状が治まっても,気道の荒れた状態はすぐには回復しません.怪我をして皮膚が傷付いた場合,出血が止まっても,皮膚はすぐには元に戻りません.気道や気管支粘膜も同様です.

こうした状態に,タバコの煙,排気ガス,室内のホコリやダニ,冷たい空気,臭い,ストレス,疲労,気圧の変化,気温の変化,湿度の変化,感染,運動などの刺激が加わると,気管支喘息の発作が起きてしまいます.健常者では反応しないようなわずかな刺激であっても,気管支喘息で気道が荒れている場合には反応してしまいます.これを「気道過敏性の亢進」と呼びます.たき火の後,水をかけると火は消えます.しかし,消火が不完全だと燃えかすは残り,うちわであおぐとすぐにまた燃え上がります.気道や気管支粘膜も同様です.

一旦気管支喘息の発作を起こすと,「気道過敏性の亢進」は短くて数週間,長い場合には数カ月持続します.近年,気管支喘息の基本病態は気道の慢性炎症と定義され,過敏性を引き起こしている慢性の気道炎症を鎮静させることが気管支喘息の管理において重要と考えられています.

治療は?

気道炎症を抑える薬剤として効果が高いのは,ロイコトリエン受容体拮抗薬とステロイド吸入薬です.これらを併用する場合もあります.重症例では,テオフィリン製剤を併用することもあります.

きちんと治療しないと...

小児気管支喘息の約80%は3歳以下で発症します.喘息が寛解(=病気が落ち着くこと,厳密には治癒とは異なる)に至ることが多い年齢は,小学校入学時と思春期です.幼児期あるいは学童期に適切な治療を受けた場合には,それぞれ小学校入学時あるいは思春期に気管支喘息が寛解に至る確率が高くなります.しかし,適切な治療を受けずに「気道過敏性の亢進」した状態を放置すると喘息の発作を繰り返し,「気道過敏性の亢進」がさらに進み治りにくい喘息になってしまいます.やがて薬剤に対する反応が悪くなり,成人喘息に移行します.小児気管支喘息の60-70%は思春期までに自然軽快または治癒すると言われていますが,裏を返せば30-40%は治癒に至らないすなわち成人期以降に喘息を持ち越します.成人喘息は小児喘息と異なり,治りにくく,治癒に至る確率は5%程度と言われています.「咳も喘鳴もないのになぜ喘息の治療を受けなければならないのか?」「咳も喘鳴もないのになぜ定期通院をしなければならないのか?」これらの問いに対する答えが「気道過敏性の亢進」です.気管支喘息はきちんと治療しましょう!それがお子さんを将来の喘息発作から救う唯一の方法です.