サルモネラとは?

サルモネラ菌は,ヒト,イヌ,ネコ,ウシ,ブタ,ニワトリ,カメ,ザリガニなどに広く分布します.これらの動物や汚染された食肉,鶏卵,乳製品などが感染源になり,主に腸炎を起こします.サルモネラ菌によって起こる疾患は,チフス性と非チフス性に2大別されます.チフス性サルモネラ症とは,腸チフスとパラチフスで,それぞれSalmonella typhi(チフス菌)とSalmonella paratyphi A(パラチフスA菌)が原因になります.感染源がヒトに限定されるため,衛生水準の向上とともに発生頻度は減少します.非チフス性サルモネラ症とは,腸チフスとパラチフス以外のサルモネラ感染症です.食物が感染源になり食中毒や急性胃腸炎として発症することが多く,衛生水準が向上しても制圧することは困難です.原因菌として,1970年代から1980年代前半まではSalmonella typhimuriumが多く,1980年代後半からはSalmonella enteritidisが増加しています.このほか,1999年にはSalmonella oranienburgの一過性の増加がみられました.

以下,日常診療で遭遇することが多い非チフス性のサルモネラ腸炎について述べます.

疫学と原因

サルモネラ腸炎は,幼児から成人にみられ,季節的には夏から秋に多くなります.原因食品としては鶏卵が多く,生卵,卵かけご飯はもちろんのこと,半熟卵,卵サンドイッチ,錦糸卵などにも注意が必要です.卵料理は加熱が不十分なものが多く,室温に放置すると菌が増殖してしまいます.卵のほかには,肉類が原因になることがあります.ペット(ミドリガメなど)からヒトに感染することがあるので,注意が必要です.

鶏卵のサルモネラ汚染は,産卵時や産卵後に卵殻表面に付着した菌が卵内に侵入したために起こる場合がほとんどでした.しかし,近年のSalmonella enteritidis感染の増加は,保菌している親鳥から卵への菌の移行によるものであることが明らかになっており,食品流通機構の国際化が感染を拡大させています.また,1999年のSalmonella oranienburg感染は,汚染された乾燥イカの加工品が駄菓子として流通したことによるもので,日本国内における患者数は小児を中心に1500名以上でした.

症状

6-72時間の潜伏期間の後に,高熱,嘔吐,腹痛が始まり,4分の1程度に血便がみられ,下痢の回数が多いのが特徴です.他の細菌性胃腸炎に比べ,一般に症状は重篤で,発熱の頻度は高く,持続期間が長いのが特徴です.胃腸炎以外には,一過性の菌血症,膿瘍などの腹腔内感染症,髄膜炎,心内膜炎,骨髄炎,関節炎などを起こすことが知られています.他の細菌性胃腸炎に比べ,病後に保菌者となることがあるので注意が必要です.排菌期間は1-3カ月程度ですが,最長で6-12カ月に及ぶこともあります.

臨床検査では,白血球増多,CRP陽性を示します.便培養における原因菌の証明が重要です.発熱症例では,血液培養でも菌が検出されることがあります.

治療

多くの場合,自然治癒します.症状が重篤な場合,菌血症の合併が疑われる症例,乳幼児や高齢者,基礎疾患を有する者などが抗菌薬投与の適応になります.第1選択薬はレボフロキサシンですが,小児用製剤はありません.第2選択薬はアジスロマイシンです.