2001年6月,国会最終日に教育改革関連法案が可決されました.このなかに「授業妨害をする児童生徒には出席停止を命ずることができる」という項目があります.この項目は学級崩壊や一部のこころない児童生徒を想定したものと推測します.

しかし,LD(学習障害),ADHD(注意欠陥多動性障害),アルペルガー症候群(自閉症のうち言語発達が侵されていないもの),軽度の精神発達遅滞など,本人の故意ではなく病気なのに,授業進行のさまたげになる子ども達が,学校から不当に排除される危険があるのではないかと思います.

上記疾患の持つお子さんを不当に排除をしてしまった場合には,社会に対して被害的な感情だけが残ってしまいます.社会との関わりを持とうとしなくなり,そのまま大人になってしまうことは,社会に対して敵対的な感情が残る可能性があり,本人だけでなく社会にとっても結局マイナスにしかなりません.

これらの疾患に対しては,何よりも正しい診断が不可欠です.しかし,対応できる医療機関,児童精神科医は全国的に極めて不足しており,適当な医療が受けられる状況にはありません.

一方,これらの疾病を持つお子さんは,学校では「手のかかる子ども」です.通常学級で十分な対応を受けることが最も望ましく,トレーニングを受けた専任教師が対応するのが妥当と思います.残念ながら,一般社会および学校におけるこれらの疾患に対する理解は乏しく,十分な対応が受けられる状況にありません.学校の先生方も多種多様な要求に応えなければならず,通常業務で手一杯です.現行の特殊学級はこれらのお子さんの受け入れ先としては妥当ではありません.

学校から排除され,医療も受けられないお子さんが出現することは,非常に不幸なことです.触法精神障害者の処遇に関連して,刑法改正に反対する人権派と称する人々はたくさんいるのですが,今回の教育改革関連法案の改正では,誰も声高に「授業妨害をする児童生徒には出席停止を命ずることができる」ことに反対しませんでした.

上記疾患を持つお子さんへの理解は不十分で,こういう子ども達の声を代弁してくれる人はあまりいないのではないかと思います.実際の運用はそれぞれの自治体の教育委員会にゆだねられると思うのですが,なんとかこれらのお子さんが不当な出席停止処分にならないように,関係各位にお願いする次第です.